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□赤黒い身
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翌日、日が浅く登り始め住宅街から顔を覗かせ始めた早くに更信は白い息をマフラーに潜もらせながら長い羽織りを背に纏い煙管に唇を噛ませた。
ふぅ、と煙を吐き出すと面倒だと言うように横目で影に隠れる男をチラリと見た。
「なんだ、山崎。」
「俺一応先輩なんだけど…じゃなくて、今日討伐に向かうから最終確認の会議には必ず出ろって土方副長が。」
「あー…ね。」
その言葉を言うと猫のようにスッと視線を戻し日差しとは反対側を向いた。
そして煙管に口を這わす。
「………ッ」
それ仕草は日本人離れした雰囲気の更信からゆっくりと浮かび上がる白い吐息混じりの煙。
思わず喉を上下させた。
「……他になんか用でも?」
しばらく動かない山崎を見かねてか声をかければハッとした表情を浮かべて、そそくさと立ち去っていった。
「………?」
更信は首を傾げその行く末を見送った。
会議室はざわめきに満ちている。
そのざわめきの的になっているのは、朝礼などの会議に一切参加してこなかった更信の参加によるものである。
「オイ、てめェらいい加減に静かにしろ。」
土方のその声もむなしく隊士たちの声に飲み込まれる。
飲み込まれた言葉にイラつきを表に出した土方はバズーカを1発打ち鳴らす。
「…で、だ。今回は一番隊が先駆けとして突入。二番隊と近藤さんが山崎が潜入して出てきた隠し脱出通路を塞ぐ。俺と更信が階段を塞ぐ。いいな。」
「「「「「はいっ!よろこんで!」」」」」
頭を揃ってアフロヘアーにした隊士たちは正座をして土方の話を聞いている。
更信といえば素早くバズーカを避けて部屋の隅にて壁に背を凭れて欠伸さえしている。
「更信聞いてんのか。」
その言葉に返答はないものの手をヒラヒラと上げる。
チッと土方は舌打ちをするがそれ以上は言及するつもりはないようで、細かい説明を行っていった。
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