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□第117Q 118Q
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誠凜のOF
火神は青峰と対峙していた
(エース同士の勝負はそのままチームの勢いに直結する。相手が青峰君ならなおさら・・、ですが、
誠凜にとって行きづまってる今、帰り打ちにされれば致命傷になりかねない)
「その勝負・・、もし負ければいきなり
試合が終わりますよ・・?」
敵も味方も、観客も、全員が息を飲んでその状況を見守る
すると不意に火神が動く
数秒の戦いが、二人の間で繰り広げられる
「・・・・だーめだ!
ムカつくけど勝てねーわ。今回はまだ」
パスを回し、ボールが外へと出た
<誠凜高校、T.Oです>
「なんだよー。せっかくエース対決が見られると思ったのに・・」
「パス出しておしまい?」
「何も出来ずに10番が逃げて終わりかよー」
「はぁ・・、ショボー」
「いやー。言いたい放題言われてますなー」
「高尾もわかったのか?」
「あー、なんとなくだけどな」
(素人目にはただ火神が勝負を逃げたようにしか映らないだろうが・・、
今の数秒、二人の間で行われたことは、
高次元の駆け引き・・!!)
それは細かいフェイクから互いの手を読みあった、限りなくリアルなシュミレーションである
互いが相手の力量を正確に捉えられる実力があってこそできることだ
また試合中の一対一は実力だけではなく、状況も大きく関係する
それを全て踏まえて、火神は自らの敗北を察知
結果として、ターンオーバーからの失点という最悪の事態を未然に防いだのである
自分にとって不都合な結果を受け入れる冷静な判断は、
時として勝敗以上に大きな意味をもつ
(前のアイツなら闇雲に突っこんで終わりだったが・・)
「かはっ」
そしてそれは――
火神の成長の片鱗に他ならなかった
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