夜蝶星流

□泣かないで
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女は影で何を言っているかわからないが


男は影で何をやっているのかわからない







『え?え?え?マジで?』


「マジじゃ。」


『後でや〜めたとか言わない?』


「ぬしじゃあるまいしそんな事言いんせん。」


『イヤ、俺も言ったこと無いけど…じゃあ…マジなんだね、ホントにホントだね?』


「くどいぞ、ホントにホントじゃ。」










銀兄さァァァァァァん!!


「うるせェよ。」


『おでっ週末つつつつっどうしよっっおでっでっでっでっで…』


「落ち着けよ。」


一目で何かあったのかわかるくらい興奮している星斗


銀八は若干引いた


『月詠と週末お出かけする事になったんですぅぅぅぅ!!』


「そら楽しみだなァ。








ええええええええ!?


『デジャヴ…』








『あんね〜いつも通り月詠待っててね〜月詠が来てね〜そしたらね〜週末街にでも行くかァっていうことになってねェ〜。』


嬉しすぎて口調が砕けに砕けているが大目にみてやってほしい


「デートってか。」


『で…っ…マジ止めて下さいよ銀兄さ〜んホントマジアレなんで、マジでアレなんで。』


「星斗さんキャラ、キャラが。」


『え?お土産はキャラメルコーンがいいって?オッケーオッケー任せんしゃーい。』


「そんな事一言も言ってませんよ!!」


「ウザいアル。」


『神楽ちゃん辛辣〜。』


「ま、頑張れや。」


『はい!!』


星斗の返事に三人は苦笑いを溢した








待ち合わせ時間に着くのは5分前になる予定


星斗は時計をチラチラ見ながら歩いていた


「オイ。」


『ん。』


背後からやってきたのは見知らぬ男二人


顔は知らないが
目的はわかる


「銀魂高校の3Zの奴だろ。」


『そうだけど。』


星斗がニヤリと笑うと男二人は鉄パイプとバットを握り締めた









「遅いのう…。」


待ち合わせ時間から20分がたっている


星斗が現れる気配は無い


「何かあったのか…」


携帯にかけても留守電になるだけ


月詠は不安げに携帯を見つめた



さらに20分後


月詠が星斗の家に向かおうとしていたところにチラッと見えた姿


それに月詠は走り寄る


「星斗!!」


『ごめん、凄い待たせた。』


「イヤ、気にしてない。それより何かあったのか?」


『昨日眠れなくてさァ、寝坊。』


照れ臭そうに笑う星斗に月詠の力が抜ける


「心配したぞ。」


『うん、ごめん。』


「………」


『月詠?』


「家に行くぞ。」


『へ?』


星斗の腕を掴むと強引に引っ張る


『月詠?』


「腕。」


掴んでいない方の腕を指差すと星斗の肩が跳ねる


「応急処置くらいしないといけんなし。」


『………』


星斗は大人しく月詠に引っ張られて行った








「見せろ。」


『大丈夫だってば。』


「いいから、見せろ。」


『………』


しぶしぶ腕を捲る


「……折れてないか?」


『折れてはないよ、打撲かな。』


「(…馴れてる。)」


青というより紫になっている腕はかなり痛々しい


袋に氷と水を入れ腕に当てる


『日常なんだよね。』


「ん?」


『喧嘩。』


「あァ。」


『Z組にいると何故だか他校にも敵を作っててね。』


「………」


『だから知らない人に喧嘩売られたりするんだよね。』


「…そうか。」


『俺がこの前喧嘩した人も今もどこかでZ組の誰かと喧嘩してるだろうね。』


「………」


『皆Z組大好きなんだよ。』


「…あァ。」


『ねェ、俺は大丈夫だよ。』


「…わかっておる。」


『じゃあさ…』


「ん?」








『泣かないで。』








「……っ」


『どうしたらいいかわからないから。』


月詠を抱き締める星斗の手は


少しだけ震えていた







END
確かに恋だった
 

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