猫からの贈り物

□第二話
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「大丈夫ですか、意識はありますか。」


担架に乗せられる名無に声をかける救急隊


『あー。』


血まみれの名無の腕の中にいる灯


『あーー。』


「この猫は?」


「助けようとして抱きかかえたみたいです、でも…」


『あーーー!!!』


救急車を見送る名無と灯


『なんか大変な事になってない!?』


「そんなに気にしたってもう仕方ないじゃない。」


『そうだけどさ!完全に死んじゃったよね!?』


ふと、声がした腕の中を見る


「私は寿命が近かったからいいんだけどね。」


『しゃ…喋ってらっしゃる…といか私はよくないんだけど!!』


おほほほ、と笑いながら名無の周りを走り回る灯


項垂れる名無


『元気で何より…私はこれからどうしたら…』


「あ、そのままでいいですそのままで。」


『え?』


「あんまり動き回るとね、大変なことになっちゃうからね。」


『はあ。』


ニコニコしている髪の毛が鬼のようにもじゃもじゃした人が近づいてくる


「いやー、鬼灯様の言う通りだ人間も一人いた。」


『ほおづき?』


「いやこっちの話。とりあえず付いてきて。」


灯を見るとニッコリ笑って付いていくので名無もそれに倣う


自らをお迎え課に所属している3人組のうちの一鬼だと紹介し


あとの二人は傷だらけの名無と灯の方に行っていると言う


『鬼さんでしたか、ちなみにあとの二人は何しに…』


「聞きたい?」


なんだか嫌な予感がした名無は


『いいです。』


即答していた


山の中へ進んでいくといつの間にか目の前に大きな門


『うわあ。』


「禍々しいわねえ。」


「この中を通って裁判を受けてもらいます。灯さんはこちらへ。」


「なんで。」


「いや、人間と動物は違う…」


「いや。」


「いやと言われても…」


「いや。」


『ごめんなさいこの子臆病なんです。』


「…まあいいか、一人じゃないと意味無いんだけど…」


『すいません。』


「じゃ、頑張ってね。」


門へと入っていく鬼に頭を下げ名無と灯も入っていった















『ふうう。』


どれくらい歩いただろうか


三回の裁判が終わり精神的に参りそうだ


『なんか個性的な人たちばかりだね。』


頭に乗っている灯は楽そうに笑っている


『特に一番最初の裁判の時にいた髪もじゃもじゃの人、私を見た途端大爆笑してた。』


何故、と顔をしかめる名無に灯が笑う


「理由は明白だったじゃない。」


少し曖昧になるくらい遠い記憶を掘り出し思い出す





「あひゃひゃひゃっ猫が…っ頭にっ!!うひひひひひっ!!この人がっ鬼灯様のっうぷぷぷっ!!」





『完全にアンタのせいだよね。』

「うふふ。」

『かわいい顔作っても騙されないからね、でも…鬼灯様って何者なんだろう。』


ちょくちょく出てくる名前に首を捻る


「もうすぐ会えるよ、久々の再開だね。」


『へ?』


気づけばまた門


今回はいつもより大きめ


「次の亡者をここへ!!」


『うわあ緊張するなあ。』


「早く行きましょ。」


恐る恐る入ると


すんごいでかい人


『…っ!』


たまたま近くにいた鬼の背後へ隠れる


「ちょっと何してんのよ。」


『だって怖い顔した大きな人が睨んでるんだよ!!怖いでしょうに!!』


頭上で不機嫌な声を出す灯に反論


「あの人が閻魔様だよ。」


盾にしてしまった鬼に教えられ恐る恐る覗く


『なるほど、イメージ通り。』


「え?本当?わし怖い?」


嬉しそうな閻魔に拍子抜けしたその時


「がふっ」


どこからか飛んできた金棒により閻魔の頭が血まみれに


『…』


「せっかく怖いというイメージを植え付けたのに何故わざわざ壊すんですか。」


「…うれしくて…」


「ああ、鬼灯様の機嫌が悪い。早く出た方がいいよ。」


こそっと耳打ちされおずおずと真ん中へ


「さて、では裁判を『角のお兄さん!!』


巻物を開いたがかけ寄ってくる名無に気づき台の上へ


タックルのように抱き付いてきた名無を受け止め息を吐く


「忘れてしまったのかと思いましたよ。」


『全然変わってなーい!忘れませんよ!』


「たかが十数年ですからね。というか鬼灯って誰?って状態だったじゃないですか。」


『あの時名乗ってくれなかったじゃないですか!』


「名乗りましたよ。」


『え!?』


思わず灯を見ると得意そうに


「灯の字は鬼灯様の字から取るって名無自分で言ってた。」


『…えへ。』


「かわいい顔して許されるのは最初だけだと思いなさい。」
















続く
 

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