猫からの贈り物

□第六話
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「頭痛いなぁ。」

ポソッと呟いた名無に主任は心配そうに振り向く

「大丈夫?薬あったかなぁ。」

「あ、大丈夫です。私あまり薬飲まないので。」

微笑み返すと主任は困ったように見返す

割と強がりの彼女は結構限界まで頑張ってしまうタイプだ

「名無ちゃん、丁度薬無くなっちゃったし気分転換に貰ってきてくれないかな。」

「…わかりました、ありがとうございます。」

上司の優しさに頬が緩みペンを置くと早速立ち上がり着物の裾を直す

「それで、どこへ取りに行けば…」

「ああ、えっとね…」











「わぁ…!」

名無は今、天国に来ていた

元々行くはずだったそこは初めての場所で

それはもうとても綺麗だった

暫く見とれてから、主任に貰った地図を頼りに目的地へ向かう




「…えっと、ここだな。」

看板に書かれた[極楽満月]

それを確認すると名無は扉を開いた

「ごめんください。」

初めての場所なので少し恐る恐る声をかける

人気が無く気押されながらも中に入った

「あれー、いらっしゃーい。」

声の方向を見ると人の良さそうな白衣の男性

どことなく鬼灯に似ている彼に笑みを返すと目当ての物を訪ねようとした

するはずだったのだが

「君、はじめましてだよね?僕白澤。」

「あ、はじめまして名無と申します。」

ぺこりと頭を下げた名無に笑みを深くするとその肩をそっと抱き寄せ椅子に促す

「あの…」

「ああ、大丈夫だよーとりあえずここに座って。」

初めての男性の近距離に肩を強ばらせるが白澤の雰囲気はとても柔らかい

言われたとおりに椅子に座ると少し縮こまりながら彼の様子を見守る

「そんなに緊張しないでいいからね。」

そう言いお茶を出した彼はとてもニコニコと愛想がいい

少しホットした名無はいただきます。と一言いいお茶に口をつけた

「それで、どうしたの?君みたいな可愛い子が来てくれて僕嬉しいな。」

「あ、えっと…職場のお薬が切れてしまったのでいただきに来ました
。」

白澤の言葉に戸惑いながら上司に託されたメモを見せる

「…君地獄で働いてるの?」

「あ、はい。」

「あの鬼神変人に変なことされてない?」

誰の事を言っているのか首を傾げながら

誰にも変なことはされていないので頷く

「君も大変だね、あの閻魔補佐官と一緒なんて。」

「あ、鬼灯様の事でしたか。」

瞬間

名無の表情が緩みお茶を持つ手がモジモジと動き出す

その様子を見た白澤は顔を青ざめさせ勢いよく名無に抱きついた

「えええ!?あの…っ」

「ちょっと待って!!君アイツのこと好きなの!?やめときなって僕にしときなって!!」

「ええ!?」

白澤は少し身を離すと名無の肩に手を置き迫る

「あ、あの…」

「あいつなんかより僕の方がいいよ!!あいつは名無ちゃんの癒しオーラをこわす…」

言葉の途中で叫び声を上げ奥の壁に突っ込んで行く白澤

それを唖然と見守る名無は何が起きたのか全くわからなかった

「チッこの淫獣が…誰でもかんでも手を出しやがって。」

後ろから声がし勢いよく振り向くと

そこには肩に金棒を担いだ鬼灯

「鬼灯様!!」

頬を染め立ち上がる名無に目を向け息を吐く

想いはやはり白澤には行っていないようだ

「名無さん、何故この淫獣の住処に。」

「等活地獄の常備薬が切れてしまったので…」

話をしていると何故か元気な白澤が怒りをあらわにしながら鬼灯に詰め寄る

その様子に名無は慌てた

「は、白澤様!!そんな怪我で動いたら大変です!!」

「えーじゃあ名無ちゃんが介抱してくれる?」

鬼灯から視点を名無に移しニコニコしながら手をとる

その白澤の手首を握りしめ捻り上げる凶悪顔の鬼灯

「名無さん、こんな奴の心配なんてすることないですよ。一応これでも神獣なので。」

「いててててててて!!てめぇなにしやがる!!」

涙目の白澤は鬼灯から手を振り離し睨みつける

名無はその光景を驚きで開いた口が塞がらないのを手で隠しながら見守っていた

「もう本当なんなんだよお前は!!腹立つなぁ!!」

「お前が見境なく盛ってるからだろうが。」

「そんなのお前に関係ないだろ!!」

口喧嘩をしている2人をポカンと見ていたがなんとなく仲がいいんだなと思うことにした

邪魔をしない方がいいだろうか

と思い先程まで座っていた椅子に腰掛け少し冷めたお茶を口に運ぶ








「ああ、ごめんね名無ちゃん。コレさっきのメモにあったお薬。」

暫くすると気が済んだのか白澤が薬の入った袋を出てきた

「ありがとうございます白澤様。」

「ああああ、可愛いなぁ。このままここにいてもいいんだよ?」

「さぁ行きましょうか名無さん。」

「え、あ、はい。」

鬼灯に声をかけられ名無は自動的に付いていく

「おい!名無ちゃんは置いてけよ!まだ話終わってない!」

「お前の所に名無さんをやるわけないだろうが。この方は私のものです。」

「えっ」

「…」

鬼灯の言葉に暫くフリーズした名無はどんどん

どんどん赤くなっていく

「へー、お前…そうなんだ。」

「何がですか。」

「べーつにー?名無ちゃん顔真っ赤だよー?かーわーいー。」

「同感です。」

「お前と同じ考えなんてすっげぇヤなんだけど。」

「同感です。」

「むっかつく!!」

最早二人の言葉が耳に入っていない名無はただただ熱くなる顔を手で冷やすのみだった








続く

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