猫からの贈り物

□第八話
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なんやかんやで桃太郎は桃源郷へ芝刈りに

犬、猿、雉は不喜処地獄へ就職となった

騒ぎが終わり鬼灯は桃太郎達を連れて戻って行った

他の鬼達は片付けと呵責に戻っている

「あ、そろそろ行かないと。」

片付け半ばにある1人の鬼が時間を気にして同僚に声をかけていた

それに気がついた名無はその獄卒に近づく

「何かありました?」

「ああ、桃太郎を桃源郷に案内して欲しいと鬼灯様に言われてたので。」

「あ、それなら私が行きますよ。」

「いいんですか?」

正直天国まで行くのはめんどくさかったのだ

それに早く片付けを終わらせて呵責の戻りたい

「ええ、これくらいやらせてくださいな。」

「ありがたいです。」

にこやかにその場を後にする名無

「なんか何となく雰囲気よくなったよなーここも。」

「なー。」

鬼達は早々に片付けに戻るといつもの日常に入っていった









「失礼致します。」

「おや。」

桃太郎達に仕事の説明が終わったようで雑談をしていた鬼灯様達

現れた名無に鬼灯は素直に驚きの声を上げた

「桃太郎さんを桃源郷へご案内しに来ました。」

「私は他の鬼にお願いしたと思うんですが。」

「お片付けが大変そうだったので私が代わりに。」

「そうですか…」

ポチが名無にじゃれつきそれを笑顔で受け止める

柿助とルリオもそれに加わり桃太郎は小さい声で謝罪を口にしている

名無はそれを聞き笑顔で首を振った

その様子を見ていた鬼灯は少し考えた後

「名無さん、すいませんがその前に灯さんを呼んでもらえますか。」

「わかりました。」

すぐに了承しシロ達に手を振ると裁判所を後にした









「お呼びですか鬼灯様。」

名無の頭の上から飛び降りた灯は姿勢を正し座る

「わざわざすいません。この方達はこれから不喜処地獄に勤務する新人ですのでお願いしたくて。」

「了承しました、早速行きましょうか。」

「はい!!」

元気よく返事をした桃太郎ブラザーズは楽しそうに仕事場へ向かっていった

「さて…私達も行きましょうか。」

「え。」

「早く、行きますよ。」

歩き出す鬼灯とそれに付いていく桃太郎

驚いた名無は少し遅れる

「鬼灯様!私が行きますから!」

追いついた名無は鬼灯の隣に並び慌てて言う

歩みを止めない鬼神は彼女を見下ろすとため息をつき口を開いた

「…あなた、あの変態の事を忘れていませんか。」

「…あっ」

「桃源郷に行きたいのはわかりますがあの男の元へあなた一人で行かせるわけにはいきません。」

行きたいとバレてたのか…

苦笑し大人しくなった名無に満足したのか鬼灯は前に目線を戻す

それを見ていた桃太郎は躊躇なく問いかけた

「あの、お二人はお付き合いをしてるんですか?」

「え!?」

「いや、男の元に一人で行かせたくないとか言ってるからてっきり…」

「ち、ち、ち、違います!!それは白澤様だからで!!私なんかが釣り合うような方じゃないんです鬼灯様は!!!」

「な、なんかすんません。」

あまりの名無の気迫に少し引いて理解する

彼女の片思いなのかーと

てっきり鬼灯も名無に惚れていると思ったのだが









「うおー!桃源郷初めて来た!すげー!!」

桃太郎の歓喜の声に名無も2回目ながら感動の声をあげる

いつ来ても綺麗な場所だ

「それでは私達はあの馬鹿の所に行ってくるので名無さんはこの辺りで待っていてください。」

「はい、いってらっしゃいませ。」

大きな湖と木に囲まれた場所で鬼灯達を見送ると名無は大きな木の下に座る

今度は灯も連れて来よう

そんな事を思いながら




湖の中の魚を見たり散歩に来ていた動物達と話をして少し時間がたった頃

急に風が舞い上がったと思ったら傍に白い大きな動物が降り立った

その神々しさに呆気に取られ見つめていると聞き覚えのある声

「你好、名無ちゃん。」

「え…白澤様?」

「正解〜来てくれなくて寂しかったから僕から来ちゃったよー。」

「ふふ、ごめんなさい。」

口に手を当て笑う名無は再度その姿を見る

フワフワな白澤は触ったら絶対に気持ちよさそうだ

「触ってもいいよ。」

「本当ですか!?」

嬉しそうに声をあげると名無は両手で背中を撫でる

その気持ちよさに思わず抱きつき息を吐いた

眠れる

そう思った時だった

何となく恐ろしい気配を感じ体を強ばらせる

辺りを見渡すが何もいない

いつの間にか人形になった白澤は強ばる名無を抱きしめ

大丈夫

と呟いた

「何をしてるんですか。」

「んー、逢引。」

語尾にハートマークが付きそうな白澤の言葉に鬼灯は舌打ちする

名無は声の主がわかるとホッと息をつき嬉しそうに振り向いた

「鬼灯様!おかえりなさい!!」

「…お待たせしてすいません、こちらに来なさい。」

「はい!!」

元気のいい返事とは裏腹に白澤に抱え込まれているため思い通りにいかない

困ったように鬼灯を見て次に白澤を見上げる

「あの…」

「んー名無ちゃん超癒される。」

ちなみにそれを見ている桃太郎はドン引きしていた

鬼灯は金棒を振りかぶり投げると器用に白澤の顔に命中させる

白澤も名無を巻き込まないように手を離した

名無は走って鬼灯の元へ行く

「すいません、ありがとうございます。」

「全く…」

目の前に来た名無

安全を確かめるという名目で頭や肩を触っていく

「少しでも目を離すとこうなる。」

「ごめんなさい。」

鬼灯は名無の頬を両手で挟み親指で目元を撫でた

「他に何かされてませんか。」

「はい、フワフワの白澤様を触らせてもらいました。」

目を細めた鬼灯は片手を名無の後頭部へ移動させるとそのまま撫でる

「フワフワなら灯さんやシロさんがいるでしょう。」

「そうでした。」

「…付き合ってないんだよなぁ。」

二人の様子を見ていた桃太郎はそう呟き

倒れ込んでいる新しい上司を助けに足を動かした








続く

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