猫からの贈り物

□第九話
1ページ/1ページ

それはいつもと変わらない

等活地獄で書類を確認する主任と

それをまとめる名無

いつものこの光景が

終わりに近づこうとしていた

それは誰にも予測出来ない

とある出来事がきっかけだった








閻魔大王はいつものように亡者を捌いていた

隣に立つ鬼灯もいつもと変わらない

「次の亡者。」

鬼灯が声をかけると

両手を鬼に捕まれ引きづられるようにやってきた男

これは一筋縄ではいかなそうだ

と鬼灯は小さく息を吐いた

詐欺、殺人、強盗

生前の悪事が出てくる出てくる

何故一発で地獄送りにならなかったのだろうか

「ちがうちがうちがう!!!それは俺じゃない!!俺は悪くない!!地獄なんかに行きたくない!!!」

暴れる男にここまで来た意味に勘づき巻物を台に置いた

閻魔は困ったようにその場を見守る

殺してでも連れていくどうせ生き返る

そう思い金棒を振り上げた

その時

「こんにち…は…お取り込み中でしたか。」

書類を抱えた名無がいつものように入ってきた

それを見た男は鬼灯のすきをつき名無に駆け寄っていく

「…っ名無さん!!」

「!!」

名無の目の前まで走った男は目の前で立ち止まり

崩れ落ちた

「うっ…ううう…」

「…大丈夫ですか?」

男は名無の足にしがみつきながら嗚咽をもらす

名無の表情は予想外に

微笑みを浮かべていた

「ううっ…わかってたんだ悪いことしてるってっ」

「はい。」

「でもっ全然止められなくてっ…うっ…」

「…はい。」

「ぐっううっ地獄は怖い!!行きたくない!!」

「…」

顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら訴える男

その目線に合わせるようにしゃがんだ名無は薄く笑みを浮かべながら頷く

「偉いですね、きちんと悪い事という自覚があったんですね。」

「うん…っ」

「では被害者がいて、その人の為にも罪を償っていかないといけないと、わかりますね?」

「…」

「アナタは罪人です。罰せられなくてはいけません。」

その言葉に名無から手を離し項垂れる

その男の頭を撫でながら名無はにっこり微笑んだ

「できますね、いい子ですもの。」

「…はいっ」

勢いよく返事をした男は立ち上がり

真ん中へ戻る

「お騒がせしました。」

「あ、ああ、うん。」

泣き腫らした目をしながらも先程とは違う男の様子に閻魔は狼狽える

気を取り直し改めて

「では、地獄へ。」

先程まで男を取り押さえていた鬼達はただ両側に付いているだけになり

男は名無に頭を下げると大人しく地獄への道を歩いていった

「お疲れ様です、鬼灯様、閻魔様。」

「お疲れ様ー名無ちゃん凄いねぇ。」

「お疲れ様です。先程はありがとうございます。」

「いいえ、色んな方が来られるんですね。」

書類を受け取った鬼灯は名無を見たまま考える

もしかしたら地獄の状態が良くなるかもしれない

「…あの、なんでしょう。」

鬼灯に見つめられ恥ずかしくなり

頬を染め俯く

目だけ鬼灯に向け真意を問うが本人は見つめたまま口を開かない

「鬼灯君?どうしたの?」

どんどん顔が赤くなっていく名無を可哀想に思ったのか背中を向ける鬼灯に声をかける

「…いえ、すいません。」

「あの、どうかされたんですか?」

名無の質問に鬼灯は顎に指を添えるとまだ考えているだろう脳みそをそのままに

「少し考えがあるのですが、終業後お時間を頂けませんか。」

「あげます!」

思わぬ言葉に笑顔で答えると頭を勢いよく下げ自分の部署へ戻って行った








続く

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ