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□第二十一話 母親
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○ 宮殿の外
釈良を宮殿に一人残し、美去は穂華を遠くへ避難させるべく走る。
すると大人しく腕を引かれていた穂華が、思い詰めた表情で突如立ち止まる。
美去「穂華様っ」
穂華「美去、私やっぱり釈良が…」
美去「まずはあなた様の安全を確保致します。釈良もそれを望んでの選択だったのですから」
穂華「でも安全なのはもう嫌なのっ!」
美去「…」
穂華「…ごめんなさい」
吐き捨て俯いた穂華を、美去は穏やかな表情で見つめる。
穂華の下顎をそっと持ち上げ、顔に垂れ下がっていた髪の毛を右耳に掛ける。
美去「この方がお顔立ちがすっきりとして見えますわ。長い御髪も素敵でしたけれど、短くされて、瞳の空色が一層映えるようになられましたね」
穂華「美去?」
美去「穂華様。あなたは一国の女王君なのです。一人の女性である前に…お分かりですね?」
穂華「…はい」
美去「でも私は…おそらく釈良も、あなたを一人の女性としてお慕いしております。あなたにもしもの事があれば、きっと国など簡単に放り出してしまうでしょう。私と釈良の為にも、あなたは決して死んではならないのです」
穂華「…」
美去「あなた様の事は、私が命に代えても御守り致します。参りましょう」
穂華「…ありがとう。私は幸せね。私のために命を賭けてくれる家族が2人もいるなんて」
美去「家族だなんて、光栄ですわ」
穂華「…行きましょう」
左耳に垂れた髪を掛け、真摯に前を向き直す穂華。