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□第六話 それぞれの決意
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○ 市場
伴、辺りを見渡しながら歩く。
夏要、伴の後ろを付いて行く。
夏要「伴、どうゆう事だよ。何で空族と?」
伴「遅いなぁ…どうしたんだろ?」
○ 西の森
街からは少し離れてしまっているが、太陽の光で暖かく照らされてた深緑。
不安げな表情で俯いている夕和。
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夕和の回想・市場。
伴「話し合いたい?地族と?」
夕和「はい…もし、出来たらなんですけど」
伴「どうゆう事?」
夕和「…アタシ、脱獄囚なんです」
伴「えっ?」
夕和「親の罪で無理やり有罪にされて…何度も死のうと思ったけど、どうしても死に切れなくて、ある時脱獄したんです」
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1年前。
薄暗い森を、ふらふらしながら歩いている夕和。
腕には鎖錠が付けられている。
夕和N(ナレーション)
「死に物狂いで、逃げて、逃げて、でも結局力尽きちゃって…あぁこれでやっと死ねるんだって思った時に、目の前に現れたのが、音月さんでした」
気力を無くした表情で、地面に倒れ込む。
夕和「…」
かさかさという足音に耳を澄ます。
足音は段々大きくなり、夕和の前で止まる。
恐る恐る顔を上げる夕和。
視線の先に立ち尽くす音月(23)、表情は見えない。
音月、しゃがみ込む。
夕和の視線の先、音月の優しい笑み。
音月「大丈夫よ」
音月、夕和に手を差し伸べる。
音月「一緒に行く?」
夕和「…」
体を起こし、音月の手を取る夕和。
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回想終わり。
夕和「…」
○ 市場
伴「うーん…」
険しい表情で市場を歩く伴。
後ろを付いて行く夏要。
夏要「空族の女の子って、まあさすが伴って感じだけど、そんな深入った話までしてくるって事は、君に何かを頼って来てるって事なんじゃないの?」
伴「…」
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伴の回想。
夕和「私にとって、音月さんは恩人で、空族のみんなが家族なんです。だから本当は、戦争で傷付いて欲しくない。私は皆さんと、ただ一緒に居られれば、それで良いんです」
伴「…」
夕和「でもこんな事…音月さんはもちろん、他の空族の皆さんにも頼めないし」
伴「つまり俺に、仲介してもらいたいわけだ」
夕和「…お願い、出来ませんか?」
伴、ニコッと笑う。
伴「ま、夕和ちゃんの頼みなら、聞かずともオッケーだけどね」
夕和、パァッと笑顔になる。
夕和「ありがとうございます!」
伴「とりあえず俺は、女王様に会ってさ、話聞いてくるよ」
夕和「はい。じゃあ私は…音月さんには、ダメって言われてるけど」
伴「うん?」
夕和「西の森には絶対行くなって言われてるんです。地族の基地があるからって」
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回想終わり。
伴「…まさかっ」
夏要「何?」
伴「夏要、西の森ってどっちだ?」
夏要「西の?…伴、ひょっとして地族の基地に行くつもり?」
伴「どっちだって聞いてんだ!」
夏要「こっち…」
伴、夏要の指差した方角に向かって走り出す。
夏要「伴っ!」
夏要、後を追う。