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□第十三話 密会
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○ 地族の基地

惠麻、興奮してテーブルに身を乗り出す。

惠麻「待って。穂華さんと来憂と音月はレミリアを襲った魔族の被害者で、身寄りがなかった所を国に引き取られたんだよね?」

那央「うん、どこも間違ってないよ」

惠麻「でも…音月は魔族なんでしょ?」

那央「おそらくね。だから来憂は音月を恨んでるんだ」

惠麻「どうして?音月も被害者なんじゃないの?」

那央「人間、そう簡単に割り切れるものじゃないよ。来憂の場合、信じてた相手が自分の家族を殺した、憎い敵の仲間だったんだから」

惠麻「じゃあ、裏切られたってそうゆう事?」

那央「やがて自身の特別な力に気付いた音月は、宮殿から去って行った。そして理人と協力して、魔族の仲間を集め始めたんだ」

惠麻「空族…」

弾斗「来憂も初めは奴等と分かり合おうとしてたんだぜ。なのにあの野郎は、それらをすべて裏切って、魔族と手を組みやがった。そして今度は、俺達地族を潰そうとしてるんだよ」

惠麻「…」





○ 宮殿の庭

穂華「私と来憂と音月は、幼少時代を共に過ごしたわ。でもある時、音月の様子が突然おかしくなったの。まるで、何者かが乗り移った様な、紅い瞳をして」

美去「紅い、瞳?」

穂華「それを見た街の人々は、音月をこう呼んだわ…“魔族の子供”と」

美去「…」

穂華「以来音月は、極端に人を避ける様になってしまった。例え、音月が本当に魔族の子供でも、そんな事は問題じゃないって、私達は自分に言い聞かせてたの。でもそれが返って、音月を苦しめてしまっていたのね」

穂華、膝に置いた両手をぎゅっと握り締める。

穂華「今思えば、音月が一番辛かったんだと思うわ。周囲の目はどんどん冷たくなっていく。何より、自分の存在を周りに否定される事がどれほど苦しかったか」

美去の視線、震える穂華の肩。

美去「貴方が兵を挙げないのは、二人への罪滅ぼしでもあったのですね。本当は両族を魔力で押し付けるのではなく、救いたいと思っておられるのでしょう?」

穂華「…私に、どこまで出来るかは分からない。でも二人が、今苦しんでいるのだとしたら、私も同じ苦しみを味わうべきなのよ」

美去、穂華の背に優しく触れる。

美去「そんな事おっしゃらないで。貴方は貴方のままでよろしいんです」

穂華、ゆっくりと美去を見つめる。

穂華「美去…私本当は、王位なんて、くそくらえって思ってるのよ」

美去「ふふふっ、そんな貴方ですから、私は付いて行くと決めたのです。どうか最後まで、御付き合いさせて下さい」

穂華「…ありがとう」

穂華、美去に寄り添う。
美去、穂華を優しく抱き締める。





○ 地族の基地

那央「これで分かったでしょ?あの女の冷徹さ。本当魔女みたいな女よ、音月は」

惠麻「…でも、アタシにはあの人が、そんなに悪い奴には見えなかった」

那央「きっとアンタが、あの伴って男の仲間だから、情を掛けたんだよ」

惠麻、太陽リングを見つめる。

惠麻「…そう、なのかなぁ…」

弾斗「どちらにせよ、決戦は近いってわけだな」

那央「そうね」

惠麻「…」





保「…」

不安げな表情で立ち尽くす。
 
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