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□第四話 次期族長
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○ 穂華の部屋

白が基調の広々とした部屋。
王族だけあり、豪華なベッド・ソファ・テーブル・鏡などが置かれているが、空きスペースが目立ち、あまり生活感はない。
穂華、鏡の前で髪を解く。
鏡に映った自分の姿を見つめている内に、過去の自分の姿をそれに重ねていく。





穂華の回想・13年前
一人の少女が、レミリア市場の真ん中で、頭を抱えてしゃがみ込んでいる。
目は虚ろで、体は大きく震えている。
周囲には野次が大量に集まっているが、誰一人少女に近付こうとはしない。
穂華(11)、怯えながらも、自分と同じ歳ほどの少女から視線を反らす事が出来ない。
恐怖からなのか、腰が抜けてしまい、立ち上がる事もままならなくなっている。





回想終わり。
過去を振り返る穂華。
市場での映像は、その3年後の映像を呼び起こす。





穂華の回想・10年前
玉座の間、俯いている穂華(14)。
その目の前を、棺桶を運ぶ兵士達が通り過ぎて行く。
閑散とした周囲、女官達や他の兵士の厳かな表情。
葬式にしては異様な緊張感が漂っている。





両陛下の寝室。
ベッドで弱々しく横たわる先女王、それを囲む女官達。
本来隣に居るべき先王の姿はない。
傍らにただ立ち尽くす穂華を、虚ろな瞳で見つめる女王に、国の最大権力者である威厳は皆無である。

先女王「穂華…どうかあなたには、レミリアの王位を継いで、この国を治めて欲しい…あなたになら、すべてを任せられる…だってあなたは、私とあの人の娘なのだもの」

穂華「私は・・・でもっ…私には国だなんて、重過ぎるっ…」

それに対し、返答はない。
目を閉じた先女王は、おそらくもう動かない。

女官「陛下‥女王陛下っ‥」

穂華「…」





回想終わり。
立ち上がり、窓際へ移動。
傍に置かれた椅子に腰掛け、窓の外を見つめる。

穂華「…みんな、ごめんなさいっ…」

目を瞑ると同時、零れ落ちる大粒の涙。
窓から差し込んだ月の光が、皮肉にも滴を美しく照らし出す。





部屋の外。
扉に背を向け、佇む釈良。

釈良「…」

両手にぎゅっと力を込める。
 
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