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□第八話 捕獲
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○ 基地の周辺

伴・夏要・夕和、木の影から基地を見据える。
緊張の面持ちで、思わず息を飲む夏要。

夏要「ここが、地族の基地…」

伴「結構な規模だな」

夕和「…」

夕和、不安げな表情で俯いている。
伴、その様子に気付き、夕和の頭に手を置く。
夕和、ドキッとして伴を見上げる。

伴「大丈夫だよ。俺が付いてる」

夕和「…はい」

安堵の表情を浮かべる夕和。

夏要「本当に大丈夫なの?伴」

夏要、訝しげに伴を見つめる。

伴「ま、何とかなるだろ」

夏要、途端に冷や汗が流れる。

夏要「うわぁ、何にも考えてないっ」





保、必死の形相で、那央の放った複数の矢から逃げ惑う。

保「うわぁーっ!」

那央、構わず矢を放ち続ける。
弾斗、那央の隣でへらへらと笑っている。

那央「保、アンタ葉術使えるんだろ?だったらアタシの矢を止められるはずだよ」

那央、繰り返し矢を放ち続ける。

保「無理ですよーっ!避けるのに精一杯で」

那央「だから避けるなって言ってんの!」

弾斗、腹を抱えて笑い出す。

弾斗「これは俺が出るまでもねーな!」

保、ひたすら矢から逃れようと駆け回る。
キョロキョロと周囲を見渡す。

保「あー、どうしよう‥あっ!あそこにっ!」

救いとばかりに、近くの茂みに跳び込む。
身を屈めて、呼吸を整える。

那央「隠れた様ね、保」

弓を降ろす那央。

弾斗「その様だな」

保、体を小さく丸めながら、那央と弾斗の動きを見張っている。

保「うぅ…ここにずっと居ても絶対見つかっちゃうし…」

背後から、ガサガサッと言う音。
基地を観察している、伴・夏要・夕和、保と背中合わせになっている事に気付いていない。

保「誰だろう?こんな所に…」

体勢を変え、正面で三人を観察する保、視線に夕和のバンダナ、目を大きく見開く。

保「く、空族っ!?」

戦き、後ろのめりになる。
伴・夏要・夕和、一斉に振り返り、保と目が合う。
ハッとして、怯える夕和。

伴「何だコイツ?」

夕和「多分、地族の…」

言葉を遮り、夕和と夏要に目掛けて、保の後方から複数の矢が飛んで来る。
一つの矢は、夕和の顔を横切り、真後ろの木に突き刺さる。
恐怖で、言葉を失う夕和。

夏要「うわっ!」

伴「おい!」

夏要、思わず飛び込む様に伴に擦り寄る、頭上を矢が通り過ぎていく。
夕和の後ろに刺さった矢から、蔦状のものが伸び出し、夕和の体に絡み付いて木に拘束する。

夕和「あぅっ‥」

伴「夕和ちゃんっ!」

夏要「あだっ!」

伴、夏要の体を放り、夕和の元に走る。
ポケットからナイフを取り出しながら、絡み付いた蔦に触れる。

伴「なんだ?植物かこれ‥」

夕和「伴さんっ!!」

弾斗、保の後方から、勢い良く飛び出す。

弾斗「させるかっ!」

弾斗、伴に狼牙(鋭い爪)で攻撃を仕掛ける。
伴、咄嗟に、ナイフで攻撃を受ける。
しばらく硬直し、力の差から弾斗の優勢になる。

伴「くっ…」

立ち上がる夏要。

夏要「伴っ!」

夏要、伴に駆け寄ろうとする。

伴「来るな夏要っ!」

ビクッと体を震わせ、立ち止まる夏要。

伴「お前のすべき事は、何だか分かってんだろ」

夏要「…」

弾斗に押され、徐々に追い詰められて行く伴。
夏要、夕和に駆け寄る。
保、圧倒され、ただ出来事を傍観している。
夏要、腰に備えた小型銃を手に取る。

夏要「少し、我慢して」

夕和、コクンと頷き、不安げに夏要を見つめる。
夏要、蔦に向けて銃を突き付ける。

夏要「着火砲!」

夕和、ぎゅっと目を閉じる。
蔦の一部が銃弾で弾け飛ぶ。

夏要「もう一発っ」

夏要、再び蔦に銃口を突きつける。
夕和の視線の先、弓を構える那央の姿。

夕和「危ない!!」

夏要、振り返るが反応出来ない。
夕和、自由になった右手で、複数の針を飛ばす。
針が矢に当たり、地面にぽとりと落ちる。
夏要・保、落ちた矢を唖然と見下ろす。

夏要「すっ…」

保「すごい…」

那央、夏要と夕和の前にゆっくりと歩み寄る。

那央「アタシの矢をそんな針でね。でもここまでだよ」

弓を夕和に構え、鋭い眼光を向ける。

夏要「待って!この子は君達と、話合いがしたくて来ただけなんだ」

那央「空族がかい?今更話す事なんてないよ」

言葉を噤み、俯いている夕和。

那央「どうせ音月に言われて、ここまで来たんだろ?」

夕和「違います!音月さんは関係ないんです」

那央「どうだかね」

夕和、キッと表情が変わり、那央を睨み付ける。
 
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