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□第十二話 来憂・音月・穂華
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○ 宮殿
中央に、太陽と月を象ったオブジェが設置され、色取り取りの花が咲き乱れている。
穂華「はぁ…」
穂華、オブジェの先端に腰を下ろし、空を見上げて寛いでいる。
美去「…」
美去、庭の入り口から、穂華をじっと見つめる。
穂華「あら、どうかしたの?」
美去「穂華様」
穂華「退屈していた所なのよ。釈良がどうしてもゆっくりしろって」
美去「私でよろしければ、御話相手ぐらいには」
穂華「良かった」
屈託なく笑う。
穂華「美去がこの国に来て、もう随分経つわね」
美去、穂華の隣に腰掛ける。
美去「もうすぐ、6年になります」
穂華「そう…早いわね、時が経つのは。この10年は本当にあっと言う間だったわ。でも、何があったかは、あまり思い出せないの」
美去の視線、悲しげに俯く穂華の横顔。
美去「…穂華様」
穂華「ん?」
美去「穂華様の…生い立ちについて、御聞きしてもよろしいでしょうか」
穂華「…突然、どうしたの?」
美去「大変な無礼を働いている事は承知しております。ですが…」
穂華「…ううん。むしろ今まで、話さないでいてごめんなさい。でも隠していたわけじゃないの。何となく…」
美去「…」
目を細め、真っ直ぐ前を見つめる穂華。
穂華「私の本当の両親は…魔族に、殺されたの」
表情が険しくなる美去。
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玉座の間。
佇む釈良、その背中越しに夏要。
釈良「王族?」
夏要「はい。実は、僕が先生から預かった資料の中に、先代の王族について書かれている一節があって、少し気になったので…」
釈良、夏要を正面に捉える。
釈良「君は一体、何が知りたいんだ?」
夏要「えっ…と、一言では言えないんですけど」
釈良、再び夏要に背を向ける。
釈良「魔力の開放について、美去とこそこそ調べている様だが?」
夏要「えっ!知ってたんですか?」
釈良「当たり前だ」
夏要「…なら、単刀直入に言いますけど…釈良さんは、魔力の開放について、何か重要な秘密を知っているんじゃないですか?」
釈良「…」
夏要「そりゃあ、魔力を使えば、穂華様への国民の反応が冷たくなる事は納得出来ます。けど…」
夏要の言葉を遮る。
釈良「そうではない」
夏要「えっ?」
釈良「私が真に気掛かりなのは、穂華様の事だけじゃない」
夏要「じゃあ、何故貴方はそこまで、魔力の開放を拒むんですか?」
釈良「…」
夏要「お願いします!話して下さい!こうして居る間にも、惠麻や伴は、すでに争いに巻き込まれているんです!」
夏要に向き直し、しばし沈黙が流れる。
釈良「お前達が見つけた守翁の部屋…あれは先代が用意したフェイクだ」
夏要「フェイク?」
釈良「本当の研究室は、この玉座の間にある」
夏要「…えっ!ど、どこに?」
夏要、興奮した様子で、左右に首を向ける。
釈良、玉座に歩み寄り、裏の石版の配列をずらしていく。
緊張の面持ちで、立ち尽している夏要。
するとゴゴゴッという音が響き渡り、玉座の背後に扉が現れる。
夏要「これが、先生の?」
釈良「守翁の研究室だ」
息を呑む夏要。
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守翁の研究室。
高い本棚と机が一つだけのシンプルな部屋。
ライトが設置されているが、壊れている。
釈良、火の灯されたランプを机に置き、部屋の中を照らす。
足を踏み入れる夏要。
夏要「はーぁ…」
思わず感嘆の声を漏らしながら、室内を見渡す。
釈良、本棚に触れる。
釈良「ここにあるものは主に、レミリア襲撃事件の詳細を記した文献だ」
ハッとして、釈良に振り返る夏要。
夏要「やっぱり、二つの魔力と、何か関係あるんですか?」
釈良「…」