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□第十五話 歯痒い気持ち
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○ 地族の基地

桐友の部屋。
壁際にはきちんとメイキングされたベッドが置かれ、本棚の本・机・椅子はいずれも在るべき場所に整えられている。
部屋の扉をそっと開き、廊下、余所余所しく人の気配を確認する。

桐友「…」





キッチン。

保「あ、桐友君」

桐友「おはよう」

保「…大丈夫?」

桐友「何が?」

どんよりとした空気。
表情は曇りきっている。

保「あっ…もしかして…昨日の空族の?」

桐友「…」

保「…ごめん、あれ僕のせいなんだ。彼女が逃げたのは…」

桐友「違うよ」

保「えっ…?」

桐友「空族が逃げた事は別にいいんだ。どの道、人質とか、そうゆうの無意味だし。力で勝たなきゃ意味ないからね」

保「じゃあ…」

じっと黙り込み、保から視線を反らしたかと思うと、みるみる赤くなっていく頬の色。

桐友「あー!!俺はなんてバカな事を!」

叫ぶ様な声、頭を抱えて丸め込む。

保「ちょっと、どうしたの?」

桐友「…」





大広間。
来憂、中央の椅子に腰掛けている。
泳ぐ視線、指先でテーブルをトントン叩いてみたり、落ち着きがない。

惠麻の声「ふあぁ〜」

ビクッとして振り返る。

来憂「…惠麻」

惠麻「おはよー」

来憂「おはよう」

惠麻「…どうしたの?」

来憂「何でもないっ」

声が裏返っている。
背を向ける来憂に、惠麻の鋭い視線。

惠麻「嘘だ。何?」

次第に顔が赤みを増していく。
すると、突如グーッという間の抜けた音が、大広間に響く。

惠麻「あ、ごめん」

腹に手を当て、てへっと照れ笑いを浮かべる。





キッチン、手前の廊下に惠麻・来憂。
入ろうとした瞬間、中からの声に反応し、動きを止める来憂。

保の声「どうしちゃったの桐友君!」

来憂「…」

惠麻「何してるの?」

惠麻が怪訝そうに見つめると、人差し指を立て、「しっ」と言葉には出さないが、黙る様伝える。
当然眉を顰めるも、来憂の言う通りにする惠麻。





桐友「ハァ…何ムキになってるんだか」

保「桐友君が?」

桐友「変かな、やっぱり」

保「変ってゆうか、桐友君はいつも冷静で、落ち着いてるイメージだったから…」

桐友「…俺もそうしてるつもりだったんだ。でもあの時、理人を見る来憂の目を見たら…」





来憂「・・・」

桐友の言葉を聞き、ハッとする。





保「来憂の?」

桐友「うん…負けたくないって思った、理人にだけは…そしたら、妙に空回りしちゃって…」

保「・・・もしかして、桐友君…」

保の言葉を遮る様、顔を逸らしながら、更に手をぐっと突き出す。

桐友「ダメ!それ以上は言わないで!頼むから!」

みるみる頬が紅潮していく桐友。
つられ顔を赤らめ、恥ずかしそうに頭を下げる。

保「ごめん…」





惠麻「…」

桐友→保→来憂と、移動していく惠麻の視線、皆同じ色をしている。

惠麻「…行こっか?」

ビクッと震えた来憂を見て、にやりと笑み、率先してその場から去って行く。
 
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