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□第八話 捕獲
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弾斗、余裕の表情で、伴に狼牙で切り掛かる。
伴、弾斗の攻撃を避けるのに精一杯で、仕掛ける事が出来ない。
伴「野郎っ…」
ナイフを振り降ろし、すぐに刃を上に向けて突き上げる。
弾斗、それをさらりと交わす。
弾斗「無駄無駄!お前の力じゃ、俺に傷一つ与える事は出来ねぇよ」
伴「力、ならな」
伴、左手を胸の前に翳し、弾斗に指輪を向ける。
弾斗、指輪を見てハッとする。
弾斗「おい、お前、その指輪…」
瞬間、指輪から吹雪が放たれ、弾斗の目が氷付けになる。
弾斗「うわっ!何だこりゃ!」
氷に覆われた目を両手で押さえ、パニックに陥る弾斗。
伴「15分もすりゃ溶けるって」
弾斗「くっそー!」
弾斗、居ても立っても居られず、暴れ出す。
伴、急いで夕和達の元へ駆けて行く。
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保「那央さん!」
那央、左腕を針で負傷し、右手で傷口を押さえている。
腕からは微量の血が流れている。
那央「くっ…」
夏要、慌てて夕和に囁く。
夏要「ちょっと…」
夕和、那央を威嚇するも、手足が震えている。
那央「よくもやってくれたわね」
夕和「空族の皆さんを悪く言う事は、許しません」
伴「夕和ちゃん!」
駆け付けた伴を一瞥し、鼻で笑う那央。
那央「弾斗!いつまでも何やってんだい?」
弾斗、よたよたと木に掴まりながら歩いて来る。
弾斗「ちくしょー、目が凍って…」
那央「そんな氷、さっさと火術で溶かしちまえば良いだろ?」
弾斗「そうか!」
緋玉を目の前に翳し、炎を繰り出す。
弾斗「うあーちぃーっ!」
弾斗、熱さで跳び上がる。
伴、火術に目を見張る。
伴「火が…」
目の周りの氷が溶け、伴を指差す伴。
弾斗「これでお前の技はもう効かねぇぜ、小僧」
那央「アンタ、氷を操るみたいね」
夕和「えっ、氷?」
伴「…」
伴、夕和に指輪を見せる。
伴「この月光リングの力だ。あの時、みんなの答えを聞いた後に、氷を使って手の中で指輪を滑らせて移動させてたんだ」
夕和「‥」
夕和の反応を、不思議そうに見つめる伴。
那央・保、伴の指輪に目を凝視する。
那央「その指輪…」
保「惠麻さんと同じ…」
夕和「音月さんと同じ…」
夕和・保、言葉が重なる。
伴「音月?」
夕和の言葉を聞き取る伴。
那央、不意打ちに伴に矢を放つ。
夏要「着火砲!」
夏要、銃弾で矢を落とす。
伴「ナイスだ、夏要!」
夏要、弾斗と目が合う。
弾斗、夏要に狼牙で攻撃する。
夏要「うわぁっ!」
夏要、咄嗟に着火砲を弾斗に命中させる。
弾斗、象壁(頑丈な壁)で銃弾を完全に防御する。
弾斗「効かんっ!」
夏要「いぃっ!」
伴「夏要っ!」
那央、伴の足元に矢を放つ。
伴、即座に避けるが、矢から伸びた蔦が身体に絡み付き、身動きが取れなくなる。
夕和「伴さん!」
伴「くそっ」
那央、ゆっくりと伴に歩み寄る。
伴「男を縛るなんて、良い趣味してるね、お姉さん」
那央「バカな事言ってんじゃないよ。アンタは空族じゃないようだけど、何でこの子に協力しているんだい?」
伴「そりゃあ、俺は世界中の女の子の味方ですから」
那央「あっそ」
那央、伴の指から月光リングを外す。
那央「これも彼女からのもらい物かしら?」
伴「さあどうだろうね。あれ?もしかしてヤキモチ?参ったなー」
夏要、気を失い、仰向けに倒れる。
弾斗、呆然とそれを眺める。
伴「夏要っ‥お前そいつに何したんだよ!」
弾斗「何もしてねぇよ。一人でビビッて気失っちまいやがった」
伴「…あっちゃー」
夕和「あのっ…その人達は関係ありませんから、解放して下さい」
伴「夕和ちゃん、いいからっ…」
那央、ふらっとして、体勢を崩す。
弾斗、思わず駆け寄る。
弾斗「おい、大丈夫か那央?」
那央「毒針か。可愛い顔して洒落た事するわね」
傷口を押さえる那央。
夕和「…」
那央「連れてくよ」
弾斗「あぁ」
弾斗、蔦に巻き付かれた夕和を、一気に担ぎ上げる。
伴「待てよ、話を聞けって!」
弾斗「那央、こいつ等は?」
那央「空族以外に用はないわ」
弾斗「そっか」
那央「行くよ、保」
保「はいっ…」
伴と目を合わせない様、俯く保。
那央・弾斗・保、基地の中に入って行く。
保、一度伴を振り返る。
伴「夕和ちゃんっ…ちっくしょー…」
伴、歯を食いしばり、悔しさから俯く。