PhantomU

□第六章 I hate it
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「おい、椿。お前、どこ行くんだよ。」
ふいに、後ろから声をかけられた。
荷物と武器の手入れをしているというのに。
「女子の部屋に入る前にはノックという常識
を知らぬのか?」
私は、振り返りもせずただ話しかけた。
相手はわかっている。
私の好きな人。
「扉、開いてた。」
「そうか。ならば、勝手に覗くのはいかがな
ものか。」
力強い手で、方をつかまれた。
その反動で振り向いてしまう。
目の前にはやはり、空がいた。
逆光で表情はよく見えなかったが、怒ってい
るようにも見えた。
「話をそらすな。教えろ。お前はどこに行く
気だ。」
「話をそらしてなんかいない・・・」
「椿!!!」
私は、何をしているんだろう。
こんなにも心配をしてくれている人に更に
心配をかけてどうする気だ。
他人の心に興味の無い空が、ここまで心配し
てくれているのに。
・・・・怒らせてしまった。
私は、俯いてボソボソ話した。
「・・・・・・研究所。私のいた場所だ。」
空は、肩の手を解いてくれた。
そして、私を大きな手で抱きしめた。
暖かかった。
人のぬくもりをその時感じた。
思わず、涙が出てしまった。
「何で、・・・・何で1人で行こうとしているん
だ。俺だって、研究所の人とは戦う理由が
ある。困ったときは、頼ってくれよ。」
「・・・・・ありがとう。」
私は、この人を絶対に守ろうと決めた。
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