Phantom

□第九章 止まらぬ時間
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戻る時は、一軸の黒い球と違い
苦しくは無かった。
ただ、歩くだけの簡単コース。

ついた先は、一軸に飛ばされた
智也の部屋だった。
テレビがつけっぱなし。
行く前と同じだった。
ただ一つ違うのは夕日がちょこん
と座っている事。
そんな事も知らず、俺達は壁から
ぬっと出てきた。
「お・・・・・にいちゃん?」
夕日は物凄く驚いている。
だが、真実を言うわけにはいかない。
静かにだまっていた。
「すごーーい!!いまのどうやったの?
まじっくでしょー?てれびでやってた!!」
・・・よし。夕日の特技、勘違い続行中だ。
その後、花村、瀬山、智也も
出てきた。
「こんにちは!わたしは、ゆうひです!!おにいちゃんがいつも
おせわになって・・・」
そういった瞬間、俺のチョップが
夕日の頭に天誅を下した。
「いたぁ。おにいちゃんひどいー
いま、おねえちゃんがたにじこしょーかいを・・・。」
それを聞いていた、花村がにこっと笑って、「こんにちは。」と
優しく返事をする。
「こんちわーー!!」と瀬山も。
「あたしは、花村雪。雪って呼んでね。夕日ちゃん。」
物凄く優しい笑みで夕日の頭を撫でる。
「私は、瀬山沙里奈!!さりなでいいよー!!ゆうひちゃん!!」
そう言って瀬山も夕日に近づく。
「ゆきおねえちゃん、いいにおいするー」
と言って夕日はこてんと眠ってしまった。
「え・・・。香水とかしてないのになぁ・・・。」
「うん・・・。いつも通りの雪の匂いなのに・・・。」
そう言って2人で顔を見合わせる。
その隣のベットの上で智也は寝そべっていた。
智也は、ベットに寝そべりながら、「今日、まじで疲れた。」
と言って、ぐったりする。まあ、俺もだが。
「一気に色々あったもんね。」
そう言って、花村も。
「お腹減ったよー・・・。」
違う意味で、瀬山もぐったり。
「智也の母さんの飯食いたい。」
そう言って、俺は下に行こうとした。
「俺もー」
智也ががばっとベットから立ち上がる。
「あたしも・・・いいかな?」
花村がそろりと立ち上がる。
「私も食べたいっ!!」
瀬山はお得意のぴょんぴょん跳び。
そう言って、皆で下へ向かった。
1階では智也の母さんが料理を作っていてくれた。
「あら?いつ帰ってきたの?
4人とも、出かけてたから
夕日ちゃんずっと部屋で待ってたのよ。」
それを聞いて、俺は驚いた。
リビングの壁を見上げる。時計があるから。
見てみると、8時をさしている。
俺達がPhantomに向かったのは、5時くらいだ。
真紀さん、時間止まるって言ってたのに・・・。
「まあ、いいわ。お嬢さん2人とも、ご飯食べていきなさい。」
そう言って、花村と瀬山を誘う。
「いいんですか!?」
「やったーーー!!」
そう言って、瀬山は喜ぶ。
「あ。私、親に電話してきますね。ご飯ご馳走になるって。
すみませんけど、電話貸して下さい。」
花村は偉い子だな。
「ええ。いいわよ。玄関の所だから、使って。」
そう言いながら智也の母さんはエプロンをつけてキッチンへ向かった。
その間、俺と瀬山、智也の3人だった。リビングのソファに腰をかけて
テレビを見ていた。
「なあ。智也おかしくないか。」
「ああ。おかしいな。今のところは絶対、3200cmだよ。」
「いや、テレビの話じゃねーよ。時間だよ。」
「空っちも思ったー?」
「瀬山もか。」
瀬山はどうやら気付いていたらしい。
「時間、進んでるよね。」
「ああ。」
「そう言われてみればそうだな。
もう何がなんだか混乱してて、気付かなかった。」
そんな会話をしていると、花村が戻ってきた。

ガチャ

戸が開いて、花村が入ってきた。
「良いらしいです。泊まっても、
ご飯食べても、もう今日一日どうでも良いって。」
笑って冗談っぽく言うが、花村。
それは爆弾発言だ。男の家に泊まる時点で。
「あら。じゃあ、泊まっていきなさい!夕日ちゃんもいるんだし」
智也の母さんは瀬山にも言った。
「ね。沙里奈ちゃんも。どう?」
そういって、もちろん!と言って瀬山も泊まる事になった。
智也が少しでれでれしているのは見ないフリをしておこう。
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