Phantom

□第十七章 それぞれの思い
1ページ/3ページ

雪は、いつでも優しいんだ。
私が、小さい頃。
何かあるとすぐ泣いていた。
犬に吼えられた。
アイスクリームを落とした。
悪口を言われた。
だけど、常に雪はそばにいて、「大丈夫」と
優しい声で泣き止ませてくれた。
私はそれが嬉しくて雪のそばにずっといた。

・・・だけど。

今日は、違った。あまり、泣かない雪が
泣いていた。
何でかは分からなかったけど、泣いていた。
1人で。ホールの隅で。誰にも見られずに。
私は、こんな事初めてでどうすればいいのか
分からなかったから、声をかけることが
出来なかった。
自分が情けなく感じて、恥ずかしかった。
そんな時、後からサラの声が聞こえた。
「瀬山様。」
「・・・サラ?どうしたの?」
「それは、こちらのセリフです。顔色が悪い
ですよ。」
「そんな事、ないよー?」
無理して、へらっと笑って見せた。
「そうですか。なら安心しました。」
サラは、少し心配そうにしながら、
外に行こうとしていた。
私は、それを目で追いかけながら眺めてた。

「・・・待って!サラ!」
あまりにも、大きい声だったので、
泣いていた雪も、サラも驚いた。
「お願い。話しを聞いてほしい!」
私が言うと、サラは全て分かっていたように
ニコっと笑って、
「聞きましょう」
と一言言った。
「私ね、皆を守れるぐらいの強い力がほしい!
・・・強くなりたいの!」
それを聞くと、何もかもが分かっていたよう
に、サラは笑った。
「そうですか。なら、私についてきてくださ
い。きっとお役にたてるはずです。」
また、サラに連行された。
ついた場所は、訓練場・・・。
「サラ。遅いぞ・・・って沙里奈!」
先にいたのは、椿だった。
「椿ー!」
サラは、2人の出会いに笑顔で見守ってい
た。
「お二人の気持ちを聞いたところ、どちらも
強くなりたいと。なので、二人で訓練
されてはいかがでしょう。」
それを聞いて、私は少し驚いた。
「・・・友達だからって手加減なしだ」
椿がそういうと、私も覚悟を決めたように
ヌンチャクを構えた。
「うん!」
サラは上の観覧席でじっくりと見ていた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ