短編小説

□恋心(翔太side)
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「翔太の彼女って今時の子とはなんか違うよな〜。」



「……どういう意味?」

「いやいや、悪い意味じゃなくってさ!…てかほんとおまえ彼女のことになると敏感だよな。普段のほほんとしてるくせに。」



――自分でも変だって自覚はあるけど、爽子のことになると冷静になれないのはどうしようもない。


「……で?」
なるべく平静を装って声を出す。



「いや、なんてゆーか、大和撫子って感じ?最近の女って、どこか自意識過剰っぽいやつが多いじゃん。
髪とかも茶髪巻き髪が多い中の黒髪ストレートも目立つし、近づきたい男結構いるみたいよ。」


「……」

「俺、教育学部に知り合いいるけど、教師になろうかってゆー真面目なやつらには特に、控え目な黒髪の可愛い子に弱いって話らしいよ〜。お前もうかうかしてらんねーかもな(笑)ってちょ!!どこ行くんだよ!」


翔太は友人の話を最後まで聞かず歩き出した。



「おいおい、まさか彼女の教室に行こうってんじゃないだろうなー!向こうは今授業中だろ?」

「悪いけどそのまさか。」





「…ったく!どんだけ余裕ねーんだよ。しょーがねーな。」

後ろから友人のつぶやきが聞こえてきたが、気にせず目的地に向かった。



「あ、いた。」

窓から見える爽子は黒板をまっすぐ見つめている。相変わらず真面目だなと微笑ましく思う反面、自分に気づいてほしいと思う。

そう思ってたら、爽子の隣の子が気づいて教えてくれたみたいだ。
爽子と目があったから、とりあえず手を振ってみた。


そのとき、なんかもの言いたげな顔でこっちを見てくる男がいたから、つい、わからせてやろうって思ってしまって…

爽子に「今からそっち行くから」と小声で言って、我ながら実にスマートに爽子の隣の席についた。


後は…お決まりのように、とりあえず無駄に話し掛けたりして、仲の良さを見せ付けて、俺の存在をアピールして……



そしたら………

「何かあったの?」

爽子がいきなり尋ねてきた―――――――鋭い!


俺は、自分勝手な邪な考えが見透かされたかと思ったら、一気に顔の温度が上がったのを感じた。


まさか、自分(彼氏)の存在をアピールして、爽子に気がある男を牽制しに来た、なんていえる訳ないと焦っていたら、ちょうど授業が終わったので適当にごまかして逃げてしまった。






―――その後の授業で。

「おまえ、なかなか行動力あるな!面白いわ!」

「いや…正直そこまでするつもりは……はぁ…」
顔見せる程度のつもりだったのに…

「ま、そうしょげるなって!怒られたわけじゃないんだろ!?」


―――自己嫌悪なのはそこではなくて、そんな些細な会話でぶっ飛ぶ自分の理性の貧弱さだ。と俺は内心思った。





帰り道ではなんとか話をそらして乗り越えた。







許してほしい。
全ては俺のわがままな恋心。



ありがとうございました!

またまたヘタレ気味な翔太くんでした!

今後ますます(いろんな意味で)余裕のなくなる翔太を書いていきたいと思います(笑)




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