ラピスラズリ
□光
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オレの腕を掴んだ君の手の、熱。
じわじわと染み渡って消えてくれない。
解かされる。
鈍らされる。
酷く揺さぶられる。
総て委ねてしまいたくなる。
総て忘れてしまいたくなる。
……オレには難しい。
願いの為に自分自身が在るから。
願いを叶える為なら、願い遂げることを阻むのなら、生を奪う。泣きながらでも。
君と過ごしてきた時間が楽しくて、楽しくて、引いたはずの線を通り越してしまったのはいつだった?
もう、戻れない。
君の手にはこんなにも力強く命が満ちていて、温かいのだと知らなかった時には戻れない。
もし、もしも、光無い深淵に潜り込んでしまったとしても、君の手は迷うこと無く引き摺り出すのだろう。
救いの手は、もうとっくに伸ばされていた。
その手を掴んだら総てが終わる。
毛布に顔を埋めて浅い呼吸を繰り返す。窓を打ちつける雨音が耳に響く。それでも、愛しい子供達の寝息は聴こえるのだ。
「いい加減、今の自分に腹ぁ括れ」
すがるな。
救いの手を、求めるな。