ラピスラズリ

□遠雷
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さやさやと流れてゆく風の音と、遠雷。
ファイは毛布にくるまりながらそれを聴いていた。

この世界に落ちてから言葉は分からないけれど、分かったことも在る。
笑い声はどの世界でも変わらないんだ。泣き声も。

君の声は。
時々、静かに、深く落ち着いた声になる。
そんな声は知らなかった。
違う。
今までは聴こうとしていなかった。君はずっと、話してくれていたのに。

でも、君が知らないオレの声を、オレは君に聴いてほしくないんだ……。
やがて来るその時が、怖い。

声が聴こえる。君の声だ。
誰かと話しているんだろう。

「もうすぐ、雨が降るね……」

誰にも聴こえない言葉を呟いて、ファイの意識は眠りに沈んでいった。

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