ラピスラズリ

□呼び声
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声。
叫び声。
知っている声。
良く聴き慣れた声。
少し掠れた声。
呼び声。
声。

「や、だ、嫌だっ……ぁあ、嫌だぁーっ!!」

体が動かない。
目も開けられない。
生暖かい体液が脈拍に合わせて噴出する。
流れていく。
壊れる。

「嫌だ、嫌……お願い……嫌だ……っ!!」

左腕は置いてきた。
迷いは無かった。
選んだからだ。

「……が、ね……」
「く、ろが、ね」
「黒鋼……っ」
「黒鋼……黒鋼!!」
「黒鋼、黒鋼、黒鋼っ……黒鋼ぇっ!!」


……呼ぶ、声……


必ず。
必ず戻る。
時間はかかるかもしれねぇけどな。
大体、俺が居なけりゃおまえも長くねぇ。
それは俺が許さねぇよ。
俺はおまえを、その命が真に尽き果てる最期の一瞬まで、生かす。
生かす為に、選んだんだ。
俺の選択だ。
だから、もう何処にも行かずに待ってろ。
必ず戻る。
必ず。

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