オブシディアン

□ハチミツ
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ふたりで毛布にくるまって、うとうととするのが好きだ。
ファイが黒鋼の頬をそうっと指で撫でてみると、黒鋼の鼻先がファイの胸に触れてくすぐったい。
時々、ほんの時々だけど、黒鋼はファイに甘えたがる。
言葉にはしない。けれどそういう時は何となく分かる。
落ち込んでいたり、嫌なことがあったり。言葉にはしないけれど、ファイは何となく分かってしまうのだ。きっと、黒鋼のことを見ているからだと思う。
ファイが気にかけると黒鋼は隠そうとするからちょっとコツが要る。何も言わず、ファイから黒鋼にくっついてみるのだ。
セックスがしたいとねだる時の黒鋼はやたらとファイに触りたがる。熱い掌が肌に触れるととても気持ちいい。なのに強がる黒鋼は、ファイに触れようとしない。

甘えてよ。いつもみたいに触ってよ。強がらないで、ほんの少しの弱さも欲しいんだ。

いつもより幼い表情が愛しくて、愛しくてたまらなくなる。
君はオレを抱きしめてくれているけれど、まるで母親に抱きつく子供みたいだよ。そう言ったら拗ねるのかもしれないね。
ファイがくすくすと笑うと黒鋼は何だと問う、けれど。

「嬉しいんだよ」

嘘は言ってないからね。

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