ラピスラズリ

□その答えは
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苛つく、呆れる、うっとうしい。
俺を振り回して喜んでいるんじゃないか?へらへら笑ってねぇで何とか言え。
「いひゃいよ〜、ごめんなさい〜」
黒鋼はファイの頬をぎゅうぎゅうと引っ張っている。黒鋼は怒っているのだ。
ファイのいたずらの標的は大抵、黒鋼だ。
オレが積極的にイタズラしたいって思うのは黒たんだけだよ。
そう言われたことも在ったが、その言葉の意味をどう受け止めるべきか。
黒鋼がファイという存在に対して抱く感情は複雑だが、今の黒鋼には余裕が足りていない。
しかし。
ファイの蒼い目がじわりとうるむと、黒鋼の大きな心臓がどくんと鳴った。

……やりすぎたか?

そう思ってしまった時、黒鋼の掌がファイの頬を撫でた。白い肌は熱を持ってほんのりと染まる。
許したわけじゃあない。苦手なだけだ。
惚れてしまったからと、相手の総てを受け入れるのは無理だ。自分の心のままに生きる他人はいない。それは時々、歪みにもなる。
ファイの奔放さを嫌う時だってあるし、ファイが泣くと辛く思うこともある。
ファイも同じだろう。黒鋼の総てを認めてはいない。出来ないのだ。
「黒様……顔がコワイ……」
ぽつりと、ファイの声が聴こえて、黒鋼は手を離した。

「ちったぁおとなしくしてろ」
「出来るだけー」

傍にいたいと想う。絡まる感情の、結局の答えはこれなのだろう。

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