ラピスラズリ

□シュガーソウル
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放課後、化学準備室でふたりは何度も何度もキスをしていた。
黒鋼に唇をくちゅりと舐められるとファイの意識はぼんやりととろけてしまう。
(黒たんって……キスするの好きだよねぇ……)
人前でファイが黒鋼にベタベタとひっつくとやめろうざい離れろと嫌がるのに、ふたりっきりになると黒鋼は学校だろうがどこだろうがファイを求めてくる。これは黒鋼なりの甘え方なのだろうとファイは思っている。
黒鋼はファイにキスをねだる。ねだるといっても実際には何も言わないし、ファイが何も言わなくても黒鋼は勝手に口づけてくる。
それでも、いつもは簡単には乱れない黒鋼の呼吸があっという間に熱くなってファイの唇を濡らしていくから、ファイは黒鋼が可愛くてたまらない。
精悍な男の顔も少し幼く見えて、ファイは黒鋼が年下なのだと実感する。
「んっ……ふぅ……」
「……っ、は……っ」
声を混ぜた息が溢れて耳に少しだけ引っかかって溶けていく。

気持ちいい。

(黒様、キス上手だから)
噛みつくように荒々しいかと思えば優しく慈しんで、黒鋼はキスでファイを震わせる。
(……あの時は……たどたどしかったけど)

あの時。

(初めてキスした時は黒たん照れちゃって……可愛かったな)

黒鋼との初めてのキスはいつだったか、実はもう記憶が曖昧になってしまっている。
たどたどしかったな、ということははっきりと覚えている。
お互いにそれなりに経験を重ねてきたはずなのだからキスだけで惑うなんて思わなかった。
けれどもファイの経験の中に黒鋼とのキスは無く、黒鋼の経験の中にファイとのキスは無く、それは紛れもなく初めての行為だった。
思い出すと恥ずかしいくらいに、ファイも黒鋼も緊張していたのだ。

長い長いキスをして黒鋼はようやくファイを放つ。
ぷは、と呼吸を緩やかに整えるファイの唇を黒鋼が親指の腹で撫ぜた。
「……黒たんとのファーストキスを思い出しちゃったー」
「何でだよ?」
「何となくー」
クスクスと笑うファイの唇を黒鋼が食む。

もう一度、もう一度とキスをして、ふたりは何度でも夢中になってしまうのだ。

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