ゴミ箱

□覚醒夜夢
1ページ/3ページ

あの時。真っ先に思ったのは彼のことだった。
死ぬ間際の出来事。あの時、何故『彼』のことを思い出したのかは判らない。『彼』の行く末が気になったのか、それとも……?
それは誰にも判らない。判るのは、死ぬ間際に『彼』のことを思い出した、自分だけ。
刹那、彼の頬に一筋の涙が伝った。
力尽きようとしている彼の唇が僅かに開き、言葉を紡ぐ。
「土…方さん…済みま…せん……」
そこで、言葉がとぎれた。
彼の瞳からは光が失われ、肌の色も土気色と化してゆく。
そして…誰にもみとられることなく、彼は亡くなった……。
それは古の『記憶』。
彼にとっては、もう思い出す事もないであろう…、辛い記憶。
そう、思い出す必要など無かったのだ…。あの事さえなければ………。





【覚醒夜夢】
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ