ゴミ箱

□覚醒夜夢
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和泉透流は都立苳旒高校に通う高校二年生だ。いつもなら足取り軽やかに高校の前にある急坂…通称『心臓破りの坂』を駆けていくのだが、今日はなんだか元気がない。
「はあ…………」
いかにも『朝から疲れています』と言うような溜め息。
と、その時、彼の背後にぬっと現れた者がいた。
そいつはなぜか顔をにたつかせながら鞄を振り上げ、そして、思い切り透流の背中へと振り下ろした!
………しばしの沈黙。
彼等の回りはすでに観客がたくさん集まっている。
そしてぶつけた張本人と言えば、『おかしいなー』と言う表情をして透流の背中を見ていた。
と、その時、透流が後ろを振り返り、大声で怒鳴り散らした。
「新也―!一体何するんじゃ――――――――!!」
恐らくこの声は辺り一帯に響き渡っただろう……。


事の起こりは朝のファックスだった。
その電話は、朝七時頃からけたたましくなり続け、透流の耳元で目覚し時計の役割を果たしていた。
朝、寝起きの悪い彼には堪ったものじゃない。
やがて電話が自動送信に切り替わり、ファックスが流れてくる。
信と共に用紙カットされたそれは、透流の頭からすっぱりとはいかないまでも削除された。
それから三十分後。
布団がもぞもぞと動きだし、まだ寝ぼけているであろう眼をごしごし擦りながら、そこから這い出てくる。
彼の家に誰か一人…例えば母親でもいたら、毎朝こんな失態は起こしてないのかもしれない。
そう、一人暮らしなのだ、彼は。
否、その言い方は適切ではない。正確には『一人暮らしにならざるを得なかった』だろう。
何故なら、つい一年ほど前まで一緒に暮らしていた姉、瞳瑚が大阪に転勤になってしまったからなのだ。このファックスも瞳瑚がいつでも連絡が取れるように、と言って購入して透流に与えた物だった。
だったら留守電付きのファックス電話の方がいいではないか、と言う人もいるだろう。実はそこなのだ、問題は。瞳瑚は留守電にメッセージをいれるのが大の苦手なのだ。だからファックスのみ購入して電話回線に繋げたのだ。
そういう事には用意周到なのか、事前にN○Tに連絡しておいたらしく、『電話を動かしたか?』などと言うTELは来なかった。(実際にあるらしい。連絡も何もしないで今ある電話回線にモジュレーターをつけて二階にひいたところ、NT○から『電話を動かしましたか』、と言う電話が掛かってきたらしい。が、これは余談)
と、言う訳で、今では自由気儘な一人暮らしをしているわけだ。



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