ながなが生地

□サッカー革命
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「あ……」


カタン、と音を立てた。振り向いたその目がオレを捉え、大きく見開かれる。

逃げたい。その一心がオレを駆り立てる。足がずず、と後ずさった。


「や、だな……キャプテン。剣城とキャプテン、付き合って…たんですね…。言ってくれたらよかったのに、」


嘘だ。例えそれが真実だとしても知りたくなかった。こんな気持ち知りたくなんてなかった。

顔は勝手に笑ってくれる。声も流れるように滑り出る。震えてしまったのは、隠せなかったけれど。


「天馬、違う、これは」

「言ってくれたらよかったのに。だったら、オレ、こんな気持ちにならずに済んだ!」


焦ったように否定しようするキャプテンの言葉を遮る。

惨めだ。すごく。
一方的に舞い上がって、些細なことに一喜一憂して。
空回ってばかり。全部、オレの勘違いじゃないか。


「勝手に期待して、期待させといて、実は違ったなんて、」


ああ、嫌だ。このままじゃオレ、キャプテンのこと傷つける。

剣城だって、傷つける。


「最低だ」


ごめんなさい。ごめんなさいキャプテン。
でも、止まらないんです。オレ、本当に、本気で好きだから。心の底から好きだって思ってしまったから。

馬鹿だから、キャプテンの言動を本気に捉えて、馬鹿な期待をした。


「嫌いだ。大嫌い、だ」


ああ、キャプテン、泣かないで。泣かないでください。

ごめんなさい。好きです。本当は大好きなんです。

でも、それを伝えたって困るでしょう?

“それでも好きなんです。諦めませんから。”

そう言ったって、困るだけでしょう?

キャプテンは優しいから。流したりあしらったりしないで、きっと真剣に悩んで、悩んで。心を痛めながらもちゃんとオレと向き合って、答えをくれる。優しくて泣きたくなるほど残酷な答えを。


「オレ、もう信じません」

「ッ天馬!!」


全速力で走る。逃げる。だってこれ以上傷つけたくない、傷つきたくない。

言い訳だって聞きたくない。どんどん歪んでいくだけだから。どうせ嫉妬にかられて酷い顔をしてしまう。

苦しい。息が苦しい。
胸が熱い。でもすごく寒い。

走っているときの風は、こんなに冷たかったかな。突き刺さるみたいに、痛いよ。


「はぁっ…は……、ふっ、…っ!」


泣かない。泣いたりなんてしない。だってオレはキャプテンみたいに泣き虫じゃない。
涙腺弱くなんてない。だからこれは涙じゃない。

頬を流れてるのは汗だよ。全速で走ったから、それで汗が出たんだ。


「……ップ、テン…!!」


苦しいのに。すごく寒いのに。
胸が熱いんだ。キャプテンへの好きが、全然冷えてくれないんだ。

教えてください、キャプテン。どうやったらこの熱は冷めてくれますか。

灯し方を教えてくれたように、消し方も教えてください。

キャプテン。



(それでもオレは忘れられない)
(諦めるのは簡単だけれど、諦めなければ必ず何とかなると言い聞かせて)
(好きになったことを後悔してない。でも、何も知らないままでいたかった)





「……で。追いかけなくていいんですか」
「っ……だって今オレが追いかけたところで余計に苦しめるだけだ……っ」
「馬鹿じゃないのか」
「なんだと!?オレが……ッオレが、どんな気持ちで……!」
「じゃあ聞きますけど、あんた一体何のために今までやってきたんですか」
「……それは、」
「全部、あいつのためでしょう」
「っ!」
「今追いかけないで、いつ追いかけるんですか。誤解されたままで終わらせて、いいんですか。全部、無駄にして、諦めるんですか。諦められるんですか。……俺はあんたの、キャプテンの気持ちを知っているから、言ってんですよ」


___________
天馬は神童さんが好きで好きで神童さんについて回って好きオーラをまき散らしててそんな天馬に神童さんも微笑んで受け入れるものだから自分の想いは神童さんに伝わっていて同じ好きでいてくれているんじゃないかって期待を抱いたところで、剣城と神童さんが二人きりでこそこそ密会している場面(剣城に弱音を吐いて涙を見せて寄りかかる神童さん)を目撃。そこから神童さんは剣城が好き=剣城も神童さんを拒まず慰めるように側にいる=二人は付き合っている、という暴論勘違いを起こす天馬。

という感じの話だった気がします。

メモしていたのがおそらく2012年だったので設定的な記憶が曖昧…かつ神童さんがまだキャプテンだった時期なので、天馬がキャプテンキャプテン言ってます。
私の中でも神童さんは永遠のキャプテン。(聞いてない)

剣城は神童さんの相談相手。天馬が好きだけどそれを素直に伝えられない、伝えることで天馬を縛り付けたくない天馬のこれからの可能性を潰したくない云々と考えて悩んで天馬のためを思って自分の感情を表出できず抱え込む神童さんの心に耳を傾けてきたので、こんな思い違いで二人の関係が崩壊するのを防ぐため最後に神童さんの背中を押しました。


補足が長い!!!!
ついでに神童さんの相談相手が霧野さんでなく剣城なのは、内容が天馬関連だからです。あと個人的な趣味です()



[2014.06/26]
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