こげこげ生地

□オパール:始まり:
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レギンレイヴ場内を、ギンタの部屋へ向かってアルヴィスは歩いていた。

そんな彼に声をかけるものが一人。


「アルヴィス?どうしたの?」


後ろからかけられた声に気付き、振り返るとそこには、頭にチャックがあるピンク色の大きなリボンを身に着けている少女がきょとんとした顔でこちらを見ていた。


「ああ、スノウか。何だ?」

「えっと、アルヴィスってこの時間帯はいつもどこか静かな場所で本読んでいるでしょ?だからこんな所にいるなんて、何かあったのかなと思って」

「いや、別に何も無いよ。ただ少し捜しモノをね……」


アルヴィスは窓の方へ視線を移しながら答えた。

どこか意味深長な言葉と表情にスノウは首を傾げたが、あえて深くは追求しなかった。

聞いても、きっと彼は答えてくれそうになかったから。


「そう言えばベルは?一緒じゃないの?」


ふと、気になった疑問を口にする。

いつもアルヴィスの傍に寄り添う妖精、ベルの姿が今はなかった。


「ああ。ベルならドロシーと出かけているはずだ」


スノウの言葉に頷きながら「町へ行くと言っていたよ」と付け足した。

そうなんだ、と納得して、スノウは自分が何をしていたのかを思い出す。


「そうだ…ねぇアルヴィス。ギンタ、知らない?」

「ギンタ……?」

「うん。ずっと捜してるんだけど、どこにもいないの。バッボさんもいないから一緒だと思うんだけど、最近ギンタ様子が変だったからちょっと心配で……見なかった?」

「俺は見ていない。部屋にはいなかったのか?」


アルヴィスが問い返すと、スノウは目を伏せコクリと頷き、黙り込んでしまった。

余程ギンタの事が心配なのだろう。


沈黙が続く間、アルヴィスは考える仕草を見せ何を思ったのか、急に踵を返し歩き始めた。

少し離れた所で立ち止まり、振り返らぬままスノウへ向け言葉を発する。



「…ギンタならきっと大丈夫だ。あいつは俺達“メル”のキャプテン――このメルヘヴンの新たな希望だからな」


スノウはハッと顔を上げ、アルヴィスを見た。

アルヴィスはまた歩き始め、スノウには見えないがその表情はきっと真剣なものに変わっているだろう。




そっか…そうなんだ……。


アルヴィスの捜し物ってギンタの事なんだね。

あなたもギンタの事を心配していたんだね。


あなたにとっても、大切なものだから・・・・・・



「大丈夫だよね。あの二人の事だから・・・」



窓の外へ視線を移し、スノウは祈るかのように自分に言い聞かせた。



一番辛い思いをしているのは自分ではない、と、知っているから・・・・・・





〜後編へ〜



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