べたべた生地

□ココアの味 ★
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勝手知ったるなんとやら……


部屋に通されるなり拓也は上着を脱いで適当に床へ放り、コタツに潜り込んでテレビをつけた。



その素早い行動に呆れながらも、輝一は拓也のために簡単にココアを作りコタツの上に置いた。

体が冷えていたのか、入れられたココアに気づくと起きあがり、カップの暖を得るように手で包み込む。

強ばっていた肩から力が抜けていくのを見計らって、輝一は拓也に瞳を合わせる。


「拓也、今日は急にどうしたの。年末なのに…家族と一緒にいなくていいのか?」

「え!?あ、うん。ちゃんと輝一の家に泊まるって伝えてあるし…」


拓也は言葉を濁し、視線を輝一から外して泳がせている。

そしてそれ以上の詮索を避けるように手にあるカップに口づけ、ココアを飲もうとした。

けれど……


「あちっ!!」

「拓也!大丈夫?」

「お、おう。これくらい平気」


どうやらまだ熱すぎたらしく、、、

火傷したのではないかと心配する輝一に拓也は笑顔を見せた。

輝一はホッと胸を撫で下ろすと手を差し出す。


「貸して?」

「何で?」

「いいから…」


拓也は疑問符を頭に浮かべながらも大人しくカップを手渡した。

カップを受け取り、まだ濃い湯気の立つそれに輝一は息を吹きかける。

飲めるくらいに冷ましているくれているのだと、理解出来た。


…でも何というか……



「っ〜!輝一もういい!オレそれで飲めるから!!」

「いや、でも……」

「その気持ちだけでいいって!!サンキューな!」


渋る輝一から拓也は半ば強制的にココアを取り上げた。

テレビの方を向くと輝一には背を向ける形になって良かったと思う。

そうしたら…このほんのり赤く染まった顔を見られずに済むから……。


(こーゆうのを素でやってのけるとこは輝一って天然なのかな…。それとも確信犯…?どちらにしても恥ずかし……///)


拓也は、先程 内心の焦りが上擦る声とともに出ていた事に気がついていなかった。

その後ろで輝一がクスッと笑みを漏らしたことも………



 
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