べたべた生地
□好奇心は火事の元
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始めは、ただの好奇心だった。
まだガキだから、そんな経験なんてないわけで。
でも一丁前に思春期なわけだから、そういうことに興味津々なわけで。
「なぁ、輝二」
「何だ」
「オレとキスしないか?」
「……は…?」
*好奇心は火事の元*
もちかけたのはオレのほう。
聞き違いかと思ったのか単に理解が追い付かなかったのか、ぽかんとした表情の輝二の唇を奪うように口付けた。
ほんの一瞬の接触。
柔らかい、と思った気がする。
でもよくわからなかったからもう一回、と自分に言い訳して。
目を丸くして動かない輝二にもう一度、キスをした。
今度はすぐには放さない。
角度を変えたりしてもっと隙間なく重なるように触れ合わせる。
なすがままにされている輝二の目をちらりと見ると、至近距離で焦点が定まらないが、紺の瞳が揺れた。
目を伏せて感触を楽しむように啄ばむ。
重なった場所からちゅ、ちゅとどこか羞恥心を刺激する音が小さくなっている。
舌を伸ばし、輝二の唇の割れ目をなぞるように這わせると、びくっと肩が揺れ、唾だか詰めていた息だかをのむ音が聞こえた。
「っ……!」
「ふ…っ」
舌を出したことにより開いた口の隙間から僅かに声が漏れる。
あー…そういえば息ってどうやって吸えばいいんだっけ。
苦しくなってきて頭に浮かんだ素朴な疑問。
瞼をゆっくり上げると、ぎゅっと眉根を寄せて目を瞑っている輝二が映った。
輝二の唇を一舐めして、ゆっくり離れる。
オレの唾液で濡れたそれを見ると何だか胸のあたりがざわざわした。
おそるおそるといった風に力を抜きつつ目を開けた輝二は、オレを見る前に手の甲や服の袖で口元を拭った。
…まぁ、濡れてたら気持ち悪いもんな。
それを眺めつつぼんやり思う。
「……どういうつもりだ」
「ん?」
どういうつもり、って…
「したかったから」
「……」
ありのままをさらっと告げると、大きなため息をつかれた。
だって本当のことだ。
キスがどんなものか気になって。
気になって気になって仕方がなくなって、そうしたら。
輝二とキスしたくなった。
ただそれだけ。
思ったら体が動いていた。