こげこげ生地
□一人じゃないから
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人間はとても弱い存在…
それなのに、僕に君を支えさせてはくれないのですか?
隣にいる事すらも許されないのですか?
*一人じゃないから*
「どこに行ったんだ、あいつは…」
草木をかき分けて進みながら、俺は急にふらりといなくなったあいつを捜していた。
自分で言うのもなんだけれど、俺が時々いなくなるのはよくある事だが、あいつが誰にも言わずにいなくなる事は滅多にない。
明日雨でも降るんじゃないかと思うくらい珍しい事だ。
俺達も始めはすぐ戻って来るんじゃないかと待っていたが、いくら待ってもあいつは戻ってこなくて…
痺れを切らした泉が捜しに行く、と立ちあがったのを合図に、手分けしてあいつを捜す事になった。
輝一が一緒に捜そう、と誘ってくれたが、俺はそれを申し訳無いと思いながらも断った。
何となく一人であいつを見つけたいと思ったから。
本当に、何となく……
「いや、違う…。俺は逃げているだけだ」
歩んでいた足を止めて、手に力を入れる。
そしてそのまま傍にあった木に力をぶつけた。
ダンッと言う音が辺りに響く。
…怒りを、感じた…。
逃げてばかりで、何も出来ない自分に。
それから…何も言わないで無茶をする、あいつに。
本当は解っているんだ。
あいつが何も言わないのは、俺達に心配をかけさせない為だという事くらい。
あいつが、強がっている事くらい…。
だけれど……
俺はそこで思考を中断した。
一瞬、何かがキラリと光ったから。
考えるより先に体が動いた。
あいついる、と、妙なくらい確信があるから。
「拓也っ!!」
「…輝二?」
俺の姿を視界に捕えると、あいつ…拓也の瞳は大きく開かれた。
頭の上にあるゴーグルは木漏れ日を反射してキラリと光っている。
どうしてここに?
そう、問われているような気がして俺は答える。
「急にいなくなっていつまでたっても戻ってこないお前を捜していた。皆で手分けしてな」
「そっか…。皆に迷惑、かけちまったな……ごめん」
俯いてどこか沈んだような声で謝る拓也。
――違う…。
いつもの、俺の知っている拓也じゃない……