こげこげ生地
□不器用なキミからの素直な文
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ふと見遣った視界の先に、赤い物体が見えた。
川の少し手前の平らな地面。
しゃがみこんで何か右手を動かしているようだが、背中を向けられているため何をしているのかは分からない。
人の性というべきか、やはり気になる……。
スタスタと足を動かし近づいていくと縮まる距離。
後ろの一歩手前まで来たが、相変わらず背を向けられたままで、、
別に気配を消しているわけでもないのに、これだけの距離で何故気づかないんだ……
こんなに近くにいるのに気がつかないあいつに呆れて、そしてここまできてあいつが手を動かしながら何かブツブツと呟いているのが聞こえた。
…小さすぎて内容は聞き取れないが。
とにかくここままじゃ埒があかないのは確かだな。。
「おい」
「………」
「…おい、拓也!」
「ぅわあっ!!?」
始めは声をかけても反応なし。
だから次はさっきより差を短くして少し声の音量を上げてみたら、大げさではないかと思うくらい肩をビクッと揺らし奇声を発し、そこでやっとこちらを振り返った。
「なっ、輝二…なんだよ〜驚かすなよな!」
「驚かすつもりはなかったが…これだけの至近距離で気づかなかったお前が悪い。気配くらいちゃんと読め」
「う…で、でもさぁ!消してたら読むも何も無いだろ!!」
「消してない。足音も普通にたててたしな。…それにも気がつかないくらい集中して、何やってたんだ?」
問えば、明らかに拓也は動揺した。
視線が宙を彷徨い、不自然に泳いでいる。
「な、何でも、、ねぇよ?あは、ははは…」
「何でもないわけあるか。隠すな素直に吐け。白状しろ」
「白状って…オマエ……罪人とかじゃあるまいしさ……」
「その表現が一番合うと思うが?」
明らかに何かを隠そうとする拓也に輝二は眼光を鋭くさせて睨み、威圧をかける。
それでも拓也は引かず、輝二の背中をグイッと押しやった。
「!?拓也っなにす…」
「いいから向こう向け!オレが良いって言うまでぜっったいにこっち振り向くなよっ!!見れば絶交だから!当分口聞いてやらねぇからなっっ!!」
本当だからな!
訳の解らない拓也の言動に疑問符を浮かべながらも、言うことを無視して行動すれば有言実行されることは目に見えていたので……多少冷や汗をかきながら輝二は拓也を背に、眼界に続く深い森を眺めるしかなかった………。