こげこげ生地

□知りたい、ハジマリ。
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(あっ……また、だ………)


拓也は俯き、胸のあたりを右手でおさえた。

とある人物を見ると必ず襲う感覚。

キュゥゥ…
それは痛くはないんだけれど、なんなんだろう……

チラリと視線だけをそいつに向ける。


肩より少し長い紺色の髪を一つに縛っている、同じ男でも見惚れてしまうくらい端正な顔立ちの少年――


名は分からないが、着ているその制服は確か隣町の私立中学のものだった気がする。

中学に上がってからこの電車内で見かけるようになり、それ以来、何故だか解らないがいつも視界に入ってくる。


――…いや、オレが視界に入れているのかな…



(……って、ええっ!?)



浮かんだ考えに自分で驚いてしまう。

なんだか顔が熱い……

熱でもあんのかな?…じゃなくて!!

きっとあれだ。

赤面してりんごみたいに真っ赤になってるってやつ。


(うわ‥‥マジで?)


胸にあてていた手で顔を覆い、大きく息を吐いて己の膝に突っ伏した。


―これを何と言うのか…今は知る術がない―


どうしたらいいんだよ‥‥

てか第一、相手の方はオレを知らないんだよなぁ……?


…なんか、チクチクする…



とりあえず、見て見ぬ振り。

急に色々言っても困るよな……


だったらまずは、挨拶から。


そうと決まれば即行動。

…と行きたいところだが、、、


「ぁ‥‥」


駅に着いたため電車は停まり、彼は降りてしまい、残されたオレは後ろ姿を見送るしか出来なかった。

隣町までまだいくつか駅があるのに、彼はいつもこの駅で降りる。

…その分あいつを見れる時間が少なくて落ち込んでいる自分がいたり。。


「はぁー…、何だよオレ……」

思いっきり、恋する乙女じゃんか


兎に角、どんな形であれ答えは出た。

告げる告げないを別にして、
明日こそは彼に話しかけてみよう。

―今日言えなかったことを、伝えてみよう―



「おはよっ!オレ、神原拓也。よろしくな!!」



―…それから、オレの中にある沢山の疑問を‥

直球でぶつけたら、一体どんな返事をくれる?―



「なあ、お前の名前は何て言うんだ?」





…知りたいから、教えて…?



――あなたの全てを このオレに――





〜END〜



 
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