こげこげ生地
□もう、限界なんだ
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あふれる。はじける。
頼むから放っておいてくれ。
気づくな。近づくな。
オレは、伝えたくなんかないのに。
「拓也…?」
困惑している。手を伸ばされる。
――触るな。
届かないってわかってんだよ。距離をあけていたいんだ。
それを、おまえからつめないでくれ。
許されるものだと勘違いするから。
「…何、泣いてるんだ」
触れて。離れて。
辿った指先には、水が一粒、光を反射してひかる。
――涙?……オレは泣いているのか?
目元を手で拭うと、濡れた。もう一度拭うと、さっきより濡れた。
泣いていると自覚したら、どんどん溢れてくる。
「…大丈夫か?」
心配そうにオレを見てくる輝二。
……なんだよ、いつもは冷たいくせに。放っておけばいいのに。
なんでこういうときに限って構うんだ。
――だから、オレみたいなのに好かれるんだ。
これ以上オレを惹きつけるなよ。
もう抑えとくの限界なんだ。
もう――…好きって、おさえとけない。
これ以上オレを惚れさせてどうしたいんだよ。
困るのはおまえなんだぞ。
もう、大丈夫じゃねぇよ。
〜end〜