メロン生地
□四年目の正直
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土曜日。
小学絞に入り立ての頃は、週によっては学校に通わなくてはならなかった曜日。
今は、休日。
朝食をとって部屋に戻ると、ベッドの上に何かがいた。
その傍らには、いつも、学校にまで被ってきている見慣れた帽子がある。
黒髪、爆発している前髪、覗く金色の瞳。
真正面の家に住んでいる、同級生のゴールド。
「どうしてあなたがここにいるの」
「いちゃわりーか」
「悪いわよ!あなたの部屋は向かいの家でしょ!」
「クリスの部屋なんだから問題ねぇだろ」
いっそふてぶてしいまでの返答。
そこにいることに、何ら疑問を感じていないらしい。
一体どこから入ったのかと視線を巡らせると、開けた覚えのない窓から風が入り込んでカーテンを揺らしているのが見えた。
……ここ、二階なんだけど。
思わず半眼になるが、無駄に運動神経のいいコイツのこと。
庭に根を張っている木を登って屋根伝いに侵入したに違いない。
窓の鍵……については、ひとまず保留にしておく。
本当にどうして、今日という日にやってきたのか。
出会ってから三年間――この日だけは、一度だって顔を合わせることすらなかったのに。
四年目にして、しかも学校の無い休日にあたって。
変に期待しなくていいんだって早々に諦めていたのに。
よりにもよって、何で。
ゴールドの顔をみると虚しくなる。
沈む心にストップをかけて、窓の外を指さした。
「早く出ていきなさい!」
「いーじゃねぇか。ケチくせぇなあ」
「よくない!!」
「ちぇっ…しゃあねぇな…」
続くと思われた応酬はあっけなく終わりを迎える。
ゴールドはすねた子供のように口を尖らせてそっぽを向いた。
…が、それも一瞬のこと。
傍に置いていた帽子を被りつつ立ち上がり、窓枠に手を、桟に片足をかけ身を乗り出して。
さすがに驚いて目を見開いた。
「ちょ…」
「じゃあな、クリス」
「ここ二階…っ!」