メロン生地

□オーキド・グリーンの暴走
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ジムにも研究所にもいなかったから、いるとすればここしかないと思った。


電気が付いていないからもしかしたら眠っているのかもしれない。

どうせなら驚かせてやろうと、合鍵を使ってこっそり忍びこんで。

音を立てないようにそーっと部屋の扉を開けると…


「きゃっ…!?」


暗闇から腕を掴まれ、部屋の中へと引きずり込まれて。

ぼすん、と何か柔らかいものの上に投げ倒された。


跳ねた身体の上に、人の気配。


両手を押さえつけられ、両足の間に割って入られる。

状況把握が追い付けなくて、混乱する。

夜闇に慣れない目は、黒しか捕らえることが出来ない。


「な、なに…っ?」


予期していなかった出来事に恐怖が率先してしまったが、冷静に考えればここは彼の家、彼の部屋だ。

いるとしたら彼の姉以外に彼本人しかありえない。


「…グリーン…?」

「……何だ」


降ってきた声が、少し硬くはあったが自分の良く知るグリーンのもので俄かに安心した。


仮定の話として、もしこれが全く知らない、グリーン以外の誰かのものだったならば、自分はどうなっていたことか。


狂ったように泣き叫んでいたかもしれない。
声も出せず、怯え固まっていたかもしれない。

考えるだけでもぞっとする。


嫌な事を振り切るように頭を振って、思考を切り替えた。

目の前…いや、上にいるグリーンを睨みつける。


「何だ、じゃないわよ!早く退きなさいよ!」

「断る」

「なっ…ちょっと…っ!?」


ひゅ、と息をのむ。

闇に慣れた目が、思った以上に間近に迫ったグリーンを認識したからだ。

夜に紛れぬ深緑の瞳は確かに、熱を帯びていて。


吐息が、触れる。



「は……ふっ……」


ちゅ、と啄ばむように軽く触れ合い、角度を変えて深く口づけられる。

唇を、歯を、割って入ってきた舌は口内を好き勝手に蹂躙する。

歯列をなぞり、舌を絡め取られ。

息継ぐ間もなく合わされる口から酸素が奪われていく。


頭が、くらくらする。

何も考えられなくなる。


ぎゅっと目を瞑ると、目尻から生理的に滲んだ涙が零れた。


あつい。あつい。


さきほど垣間見えた深い緑と相反する、赤を連想させる熱のように。

いつものグリーンからは想像もつかないほど深くて、情熱的で。

曝け出された心の内を、普段隠された執着を見せられているようで。


「んっ……はぁ…っ」


やっと解放されるが、乱された息は戻らない。

じわじわ宿った熱は、体の中を燻っている。

力は完全に抜けきってしまってグリーンに身体を預けていると、


「ひっ!?」


肩から首筋にかけて、熱い感触。

ちゅう、と音がすぐ耳元で聞こえて、僅かにちくりとした傷みが走った。


「なに…っグリーン!」


非難の声をあげるが、聞く耳持たずといった様子で。

痛みの走ったそこにれろ、と舌を這わされる。

つぅ…っと首筋にそって舐め上げられると同時に、背筋をぞくりとした何かが駆け上がった。


「ぁっやだってば!グリーン!!」


泣きそうな声で叫ぶ。

力の入らない身体で出来る抵抗はとても弱弱しいものだった。

一瞬、ぴくっとグリーンの動きは止まったが、また何事もなかったかのように、ブルーの叫びなど聞こえないふうに再開される。


「っ!」


それは耳までたどり着いて、耳朶を唇で甘く食む。

舌は形をなぞるように動き、時折軽く突いてくる。

ふう…と生温かい息が吹き込まれ、ぞくぞくと背中が波打った。


「あっ…!」


一際高く声があがり、思わず手で口元を覆うとして両腕の自由を奪われていることを思い出す。

自分でも聞いたことのない己の声に羞恥が募り、顔から火が出そうなくらい熱くなった。

そんなブルーの様子を知ってか知らずか、くつっと喉で笑う気配がした。



「…感じているのか?」

「っちが……!!」



熱で視界が潤む。


恥ずかしい。
きっとこの男は熱を孕んだ身体に気づいているのだ。


意地が悪い。

気づいていて、こんな。


 

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