メロン生地
□伝わればいいのに
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ボクはレッドさんのことが好き。
でもレッドさんはボクをどう思ってくれているのかわからない。
「レッドさん…」
「イエロー…」
目が合うことが多くて、その度意味もなく名前を呼んでみたりして。
レッドさんもそれに答えてくれる。
名前を呼び返してくれて、いつもの明るい笑顔とは違う雰囲気の――何だか、見ていて恥ずかしくなってしまうような柔らかい微笑みを見せてくれる。
かっこいいなぁ…。
思わずぽーっと見とれてしまう。
赤い瞳。情熱の赤色。炎の色じゃなくて、それは夕陽が燃えている赤の色。
引きこまれるような色、もっと近くで見たらどう見えるのかな――。
不思議な引力に引き寄せられるようにふっと近づきかけて、ハッと我に返る。
ずっと見ていたレッドさんの目が一つ、瞬きした。
うわああああああああ
声にならない悲鳴が心の中であがって、顔がカアッと一気に熱くなる。
もしかしてボクずっとレッドさんの顔見てた!?
自分の無意識の行動を顧みて恥ずかしくなる。
穴があったら埋まりたい心境ってきっとこのことだ。
きっと真っ赤になっている顔を見られたくなくてバッと下を向いた。
地面がぼんやりして視点が定まらない。頭がぐるぐるする。
じっと顔を見るなんて不躾にもほどがある。なんて先程の自分を詰ってみたところで既に過去となってしまった事象を今更消せるはずもない。
…ボクが見ていた間、レッドさんは何を思っていたのかな…。
気になること、一度気付いてしまったらその思考を振り払うことは難しい。
レッドさん、レッドさん、レッドさん。
……好き、です。ボクは、レッドさんが好きなんです。
初めて出会ったあの時から、ずっと――。
伝えるつもりはないけれど、ふとした瞬間、どうしようもなく焦がれてしまう。
好きです、と言いたくなる。あふれそうになる。
――レッドさんもボクを好きになってくれたらいいのにな。
ボクがレッドさんを好きなように、レッドさんもボクを好きでいてくれたら。
それは一体どれだけ幸せなことなんだろう。
思いがわからなくてほんの少し不安になることもあるけれど、今でさえすごく幸せなんだから、これ以上の幸せなんて想像もつかないや。