メロン生地

□甘い悪戯
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「ルビー!」

「うわぁ!…って、サファイア!窓から入って来るなといつも言っているだろう?」


部屋で一人 裁縫をしていたルビーの元に、開いていた窓からお隣さんのサファイアが飛び込んできた。

それはもう、窓が閉じていてもガラスを割って入ってきそうな勢いで。

ルビーの呆れ顔を見る限り、これは既に日常茶飯事と化しているのだろう。

サファイアはそんなルビーを気にした様子もなく、姿を捉えるなり 満面の笑顔を浮かべながら両手を差し出した。


「トリック・オア・トリート!」

「……は?」


うまく状況が呑み込めず ルビーは気の抜けた声を出してしまった。


「だから!トリック・オア・トリート!!」

「…もしかして今日、…ハロウィン?」

「そう、ハロウィンったい!」


漸くサファイアの言動の意味を理解したルビー。

ハロウィンねぇ……


「トリック・オア・トリートって、意味解って言ってる?」

「お菓子をくれるって意味やろ?早くお菓子くれったい、ルビー!!」


少し間違ってはいるけれど、そんなところも愛しくて仕方がない。

それが サファイアなのだから。



一度 苦笑を浮かべたものの、すぐさま別の考えが頭をよぎり……

お菓子を探しながら、ルビーはニヤリと (黒く)微笑んだ。


「ルビー、まだと?」

「あったよ。はい、サファイア」

「!ありがとうったい!!」


もらった物をさっそく口に放るサファイア。

ルビーの(黒い)笑みが深まったとも知らず……


「おいしか!!」

「それは良かったね。さて、サファイア?」

「?なんね ルビー?」


キョトンと、何の疑いもなくルビーを見つめるサファイア。


「trick or treat」

「ふぇっ!?」

「僕だってまだ子供だから言う権利あるよね」

「あ、あたしお菓子持ってな……」





言葉は そこで途切れた。


塞がれた口が離れる頃にはきっと、その頬は真っ赤に染まっているだろう。


ルビーは甘い飴の味をいっぱいに感じながら、この後のお楽しみを 今は閉じている紅い瞳の裏に思い描いていた。









___HAPPY Halloween!!___





〜end…〜






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