メロン生地
□思い出の中の……
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幼い頃に出逢った、名前も知らない男の子。
外を知らなかった無知な私に"自由"を教えてくれた、唯一の………
彼について覚えているのは、爆発したような前髪。それに口が悪いけれど不器用な優しさを持ち合わせていた事と、、、
光に満ちあふれる、強さを秘めた黄金の瞳・・・−−−
*:思い出の中の……:*
「今日はここまでに致しましょう」
そう告げるなり、自分に勉学を強制していた女性は道具を片付け、さっさと部屋から出ていった。
生まれてから十四年。
この対応にさすがに慣れてしまったとは言え、意思に反しため息は零れてしまう。
部屋の息苦しさを紛らわすため、クリスは閉め切られていた窓を開け放った。
爽快な風がサワサワと吹き込んでくる。
クリスはこの瞬間が好きだった。
この大きな箱の中で“外”を感じられる、たった一つの時間だから。
髪を風に揺らしながら、クリスは数年前の記憶の中へと思いを馳せた------。