こげこげ生地

□一人じゃないから
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「どうしたんだ、拓也?お前らしくないな。…何かあったのか?」

「!いや、別になんでもないんだ。ただ、皆が休んでいる間に食料とか水を探そうと思って森に入ったら迷っちまって、戻れなかっただけだからさ」


俺の言葉に拓也はハッと顔を上げ、何でもないように笑顔を作って言った。



…痛い…。



頑張って普通を装うとしているのだろうが、今の拓也の笑顔はすごく痛々しくて、泣きだしそうで…

見ているこっちまで辛くなるようなもので。



何故……





「何故、そこまで感情を溜め込むんだ…」

「え?」

「そんなに俺は信用できないのか?」

「そんな訳ないだろ!?何言ってんだよ!!」


拓也は声を張り上げる。

それでも俺は言葉を続けた。


「なら、どうして何も言わない?」

「っ!それは…」

「何でいつも一人で突っ走ろうとするんだ」

「……っ」


言葉に詰まる拓也。

しばらくの間、この空間は沈黙に包まれた。



――無茶を言っているのは解かっているんだ。

拓也が言葉に詰まる理由も……


でも、問わずにはいられない。



仲間だから…?


それもあるかもしれないが、俺はこいつの事が――…





「だめ、なんだ…っ」


握った手を震わせ、しぼり出すような声で告げる拓也。

その瞳には涙が今にも零れそうなくらい浮かんでいた。



「少しでも気を緩めたら弱音ばかり言いそうで…。誰かに頼ったら、オレの事をそいつにまで背負わせてしまいそうで……。どうしたらいいのか、オレにも分かんねえよ…っ!!」



頬を伝って涙が地に落ちる。

それを見て、場違いながらも俺は少しホッとした。


やっと、本当の拓也を見る事が出来たように思うから。


気付けば俺は拓也を抱き寄せていた。



「っ…こう、じ?」

「お前は一人じゃないんだ…。俺達、仲間がいる。辛い時は話してくれ。黙って溜め込むほうがかえって心配するからな。それに、俺は……――」



風がザァッと吹き抜ける。

俺は拓也を放して数歩あるいた。


「帰るぞ、拓也。皆お前を待っている」

「…ああ!帰ろう、輝二!!」


拓也は手で涙をぬぐい、ふっきれたような笑顔を見せた。

俺が知っているいつもの笑顔よりも、明るくて暖かい笑顔を……







君は一人じゃないんだ


僕がずっと傍にいるから…


僕の前でだけは――弱さを見せて





〜end〜



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