こげこげ生地
□心の叫び
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「っ………、ヤマト、オレは…もう……――?」
「ごめん、聞こえない。何だって?」
詰まりながらも発した太一の声は小さいもので、ヤマトまでは届かなかったようだ。
聞き返すように尋ねると、俯けていた顔を上げ 勢いよくヤマトの方へ向けて、、、
「っ!オレには!もう何も出来ないのかよ!?今日だって大輔達が戦うのを ただ見ているしかなかった!!アイツ等に比例して敵もどんどん強くなっていってるのに…オレだけ停まったまま!!っもう一緒に戦えないって言うのかよっ?!オレだけっ!!!」
悲痛そうに顔を歪めながら 太一は叫び散らす。
太一の心の言葉。
ずっと奥底のほうで息を潜めていた本音。
ヤマトは尚も流れ続ける叫びを黙って聞いていたが、しばらくして太一が落ち着きだしたのを見計らってため息をついた。
「…太一、これだけは言わせてくれ……………馬鹿だな、お前。バカ太一」
「なっ!オレは真剣にっっ!!」
「太一だけじゃない。そう思っているのは‥‥‥俺も同じだ。空や光子朗、丈やミミちゃんも…皆きっと同じ事を考えてる。ダークタワーがあるかぎり、俺達のパートナー・デジモンは進化することが出来ない。‥タケル達と、一緒に戦うことは難しいかもしれないけれど、俺達にしか出来ない事もあるさ。先輩なんだし?サポートくらいしてやらないとな」
出来る事をすればいい。それがあいつらの力になる。
心に痛みを抱えていたのは太一だけではなかった。
共に戦うことの出来ない 痛み―――
ヤマトもまた同じだからこそ、そう考えることで痛みを晴らしていたのだ。
心の痛みは同じ傷を持つ者にしか治せない。
選ばれし子供達は今まで全ての感情を分かち合ってきた。
だからこそ、、、
陽はすっかり傾き、夕闇がせまってきた頃。
太一は石田家の住むヤマト宅へと足を運んでいた。
脳裏には先程の会話がよみがえる。
『次会ったら、みんなに謝っておけよ?多分、太一の様子が違うこと気づいていただろうし』
『マジ!?あんまり表に出ないようにしてたんだけど……』(汗
『鋭い奴は気づいてるだろうさ。それより明日休みだよな、太一?今日家に泊まっていけよ』
『;;…相変わらずずいぶん急だなあ、お前;何考えてんだよ‥‥』(呆
『好きな奴を家に呼んだら、考えることは一つしか無いだろう?』(ニヤリ
『おまっ!……バーカ。。///』
思い出して、ヤマトの恥ずかし気ない台詞に赤面していまい、太一は片手で顔を覆う。
「ヤバイ‥‥着くまでに引くかな‥//?」
なかなか冷めそうもない頬の熱に、太一は長いため息をついた。
でも、と………
思い巡らした考えに表情を緩め、足取りも軽く、目的地までの道のりを楽しんでいた。。。
〜end〜
⇒あとがき+