こげこげ生地

□不器用なキミからの素直な文
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――しばらくして、また拓也が手を動かして何かしているのが気配で解った。

が、振り返る事は出来ないので思いばかりが心に詰まる。


――・・・一体、何をやっているんだ・・・――



気になって仕方がない。

相手が拓也なら、尚更……


…誰でも、好きな奴の事は何でも知っていたいと思うだろう…?



何、考えている、、、。。



フゥ…と、ため息が零れた。




時だった。





「よっし!出来た!!」


後ろで拓也が立ち上がった。

同時に聞こえた言葉…「出来た」って……


「何が出来たんだ」

「…別に…」

「…もうそっち見てもいいか?」



拓也は何も言わず、いきなり走り出した…みたいだ。

まるで俺から離れようとするみたいに………


思わず振り返ろうとすると、


「まだこっち見るなっ!オレの気配くらいオマエには分かるんだろ!?だったらオレが遠くなるまで絶対振り返るなよ!!」


…釘を刺された。

反転しかけた体をまた元に戻す。

走って服と草が擦れる音が、拓也の気配が、どんどんオレから遠ざかっていく…。

足を止めたのか、不意に動いていた気配が止まった。



「…まだ見てないよな? オレの気配が掴めなくなったら見てもいい。けど、、、絶っ対に!追いかけてくんな!!解ったなっ!!」


結構距離が開いたと思うんだが、確かに聞こえた拓也の声ははっきりと俺の中に響いた。

聞いていて心地よい、拓也の魅力の一つ――。

 

ほんとに一体、何なんだ‥‥‥


今更ながらに頭を疑問が占める。




――全力疾走したのだろうか、拓也の気配はあっという間に掴めなくなってしまった。


やっとこの思いから解放される――


そんな事を考えながら、俺は後ろを振り返った。





「………特に変わったところは無いな……」


目の前にあるのは、川と飛び石、そして向こう岸の奥にまで広がっているだろう森の木々、、そんな景色。

拓也は何を隠そうとしたのか…

不思議に思いながら先程まで拓也がしゃがみこんでいた場所まで近づくと、その疑問はすっきり解消された。



「あいつ……随分と回りくどいやり方を………」


口元に手を当て、そんな言葉を零す。

口ではそう言ったものの、きっと頬は緩み、表情はニヤけてしまっているだろう……

普段は低い体温も今だけは上がって、、、顔に熱が集中する。



細められた目先にあるのは、文字。

それは硬度が丁度よいくらいの砂地の地面に書かれた文章。


囲うように除けられた砂を見ると、何度も書き直したんだろう。

少しばかり歪んだ文字体からその必死さが伺えた。



「言葉で伝えてくれた方が嬉しかったがな…。とりあえず、返事をしにいくか」


追いかけるな、と言われた気もするがそんなの知ったことか。

追いかけずにはいられない。

捕まえて、その一回り小さな体を力一杯抱きしめて、放さない。



――そして、今度は俺が伝える番――


直接な音を持ち、その耳元で甘く囁いてやるよ‥‥‥‥拓也



輝二はスッと前を見据え、拓也が去った方向へ走りだした。







いつもは語られない君の本音

本当の心

君なりに頑張って伝えてくれようとしたんだね

言葉にすると言えなくて喧嘩をしてしまうから

そこで考えついたこの手段

始めは驚いたけれど

ちゃんと、受け止めたから…



――不器用なキミからの、素直な文(ふみ)――





〜end〜



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