メロン生地
□夏のおくりもの
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「一体何だったんだよ、あいつ等……」
レッドはベッドの上に仰向けに寝転がりながら、今朝のブルーとグリーンの事を思い出していた。
本当は何か用事があったんじゃ…とも思ってみたのだが、あの様子からしてまずありえないだろう。
考えても解かるわけが無い。
だって、あの二人のことだから。
レッドはため息をつき、ふと時刻を確認しようと時計に目をやった。
現在の時刻:午後十一時五十分
日付が変わる十分前だ。
「げっ!!もうこんな時間か…早く寝よ……っ!!」
人の気配!!
すばやく体を起こし、周りを見回す。
部屋を出て玄関まで来ると、ドアの外にはっきりと人影が見える。
暗くて顔は確認できないが、それは前をウロウロとうろつき、キョロキョロと辺りを見渡しているようで…どこからどう見ても不審者だ。
レッドは息を呑み、勢い良くドアを開けた。
「誰だ!?そこにいるのはっ!!」
「キャッ!?ご、ごめんなさい!怪しい者じゃないんです!!ぼ、ボクは…!!…レッド、さん?」
え?
不審者(仮)の口から発せられたのは自分の名前。
漸く暗闇になれてきた瞳が捉えた者は……
「い、イエロー…??」
なんと、麦藁帽子をかぶったイエローだった。
しかし何故イエローがここにいるのか。
互いに見つめあいながらしばらく沈黙し、二人の間を静寂が包み込んだ。
先に動いたのはやはりと言うべきかレッドだった。
「イエロー、こんな時間にどうしたんだ?」
「えっ?あ、その……」
イエローはごにょごにょと口篭もり俯いてしまったが、意を決して両手で持っていた物をレッドに差し出した。
「?何だ、これ?」
「受け取って、欲しいです…レッドさんに…」
「オレに…?」
コクリとイエローは頷き、顔をあげてレッドを見た。
「誕生日おめでとうございます!レッドさん!」
「!!!」
受け取った後に言われた言葉。
家の中、そして、どこか遠くからも聞こえてくる音。
レッドは思い切り瞳を見開き驚いた。
一つは告げられた言葉に…イエローがレッドの誕生日を知っていた事に。
もう一つは……
イエローの花が咲いたような笑顔に…---
そして……
「……誕生日……?あーーーっ!!」
自分の誕生日だと言う事に。
そう、レッドはすっかり忘れてしまっていたのだ。
自分の誕生日が何時なのかという事を…
フッ…馬鹿だな…(誰だよお前)
「…もしかしてレッドさん、自分の誕生日を忘れてました?」
「…ゴメン…」
「謝られても困るんですけど…待ってください。今の時間は…」
そう言ってイエローは時計を取り出し時間を読んだ。
長針・短針が指している時刻は午前0時五分…---
日付は変わり、八月七日から八月八日になっていた。
「もう日付変わってますね。八月八日!今日はレッドさんの誕生日です!」
「あれ?でもオレ、イエローに誕生日教えたっけ?」
「実はブルーさんが教えてくれたんです。ボクびっくりしちゃって…レッドさんはそんな事全然言ってくれませんでしたから…でもそれは単に忘れちゃってただけだったんですね」
安心しました、と笑うイエロー。
でも…ブルーにも教えた事ないんだけど……
…!そうか…
「ブルーが言ってた事って、こう言う意味だったのか…」
「?どうしたんですか、レッドさん?あっ!ボク、今日になる前にプレゼント渡しちゃいました…」
しゅん…と元気を失うイエローを見、レッドは少し前の事を思い返す。
プレゼントを受け取り、イエローからの祝いの言葉を貰ったときに聞こえてきた、もう一つの音……
レッドは本当に愛しいものを見るような細めた目でイエローに向けて笑みを浮かべた。
「ありがとう、イエロー」
「///!!」
その笑みに、イエローは顔をゆでだこのように真っ赤にさせて…
言おうとした言葉を忘れて見とれてしまった。
−−−聞こえてきたのは日付が変わる合図…0時を告げる鐘の音だった−−−
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