ながなが生地
□開かれた扉
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「太一!!」
「…ヤマト…」
呼ばれて振り返ってみれば、肩を大きく上下するほど息を乱して駆け寄る親友の姿。
右手には点滅を繰り返すデジヴァイスが握られている。
――追って来た、のか?
そりゃあそうか。
勢いよく走りだしちまった上に、あいつには声が聞こえていないわけだし。
「やっと…追い付いた……っはぁ、お前、現役サッカー部員の自覚あるのかよ…」
少しは加減しろよ…と、ヤマトは両膝に手をついて項垂れる。
太一は頭をがしがし掻きながら笑った。
「わり、気にしてなかった。むしろオレ、足速くてラッキー?…間にあったからな」
茶化すような軽いやりとりから一転、笑みを消した太一はどこか安堵した雰囲気混じりに呟く。
間にあった?
一体何に間にあったというのか。
ヤマトにはわからない。
困惑が表に出る。
だが、太一はヤマトのほうを見ないでずっと前方を見つめているため、それを察してはくれない。
その様子にどこか違和感を感じつつ、答えを得られなかった疑問を言葉にした。
「間にあったって…何のことだ?」
「扉」
「え?」
太一の持つデジヴァイスが強い光を放つ。
それは、三年前の二度に渡る大決戦の時に……お台場でヴェノムヴァンデモンを捕らえた、デジタルワールドでアポカリモンの大爆発を封じ込めた、あの光――太陽のような鮮烈な朱の光。
「開くんだ……扉を。助けなきゃ、いけない――」