ながなが生地

□10のお題
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 アタシには幼なじみがいる。


 頭脳明晰で武道有段者、肩書きだけでもそれなりの評価を得るのに、極めつけは冷静沈着な性格といかにも女の子にモテそうな整った容姿。

 ――文武両道・容姿端麗・そしてクールなアイツ――


 アタシの、幼なじみ。





***



「ねぇグリーン…いつまでやる気なの?」


 もう疲れたんですけど?と、言外に含んで視線を送る。
 伊達に幼なじみをしている訳ではない、わざわざ音で伝えなくても意志疎通ができるのは長年傍にいるという事の成せる特権。
 それを感じ取った証拠に、グリーンは軽く息をついて長時間睨んでいた書類からやっと顔を上げた。


「この書類は今日中に整理し終えなければならないものだ、と始めに言っただろう。」

「え〜…まだやるの?もう帰らない?」

「帰りたいなら帰っていいぞ。後は俺一人でも出来る。手伝わせて悪かったな。」


 そう言って、またグリーンは書類に目を落とす。
…またアタシを、見なくなる。

 教師に推薦されて生徒会に立候補したグリーンは物の見事に生徒会長に選ばれて。
 アタシは、そんなグリーンを傍で支えたくて、、グリーンの傍にいたくて、副会長になった。

 ……なったはいいんだけど……

 いつからかグリーンは、アタシを見なくなった。
 理由なんて解らない。
 時が経つにつれ、元々難しい性格をしていたグリーンは更に感情を表に出さないよう抑えるようになって…分からなくなった。


 アタシにはグリーンの事が解らなくて――けれど彼は自分を見せようとしない。

 グリーンはアタシの事を解ってるくせに――アタシを見ようとしない。


 …こういうの何て言うんだっけ…。
 “すれ違い”かな…?
 それとも――…



 ガタン!


「!ぁ‥」


 思考に没して停止してしまっていたみたい。
 どのくらいそうしていたのか分からなかったが、グリーンが椅子から腰を上げて書類を片しているのを見て、結構な時間、佇んでぼーっとしていたことになる。
 考えてそれがかなり恥ずかしい事に気が付き、顔がカァッと熱くなった。


「お、終わったの?書類…」


 自分の失態を、赤くなってるだろう顔を誤魔化したくてグリーン当たり障りの無いことを訊ねた。
 終わったとしたら、今から生徒会担当の教師に提出に行くのだろうか。
 窓の外を見れば冬が近い所為もあって空は夕闇に包まれている。
 こうなればグリーンが言う事のパターンは『俺は書類を提出してくるから、お前は先に帰れ』だ。
 過去に何度かあったそれを思い出して気持ちが沈んだ時、


「いや、残りは持ち帰ってやることにした。」


 予想外の言葉を発して、グリーンは手元にある書類を鞄に詰め込んでいく。

 …どうして?
 いつもと違う…。

 困惑しているアタシを余所に、グリーンは書類を入れ終わったのか、鞄を手にドアの方へ歩いて行き…


「帰らないのか?」


 ドアに手をかけた振り向き様に……アタシを見た。
 昔よく見た、久しぶりに見た、、、口角を上げて目を細める、グリーンの笑い方。


「……どうして…?」


 知らん顔して突き放したかと思えば、昔のように手を伸ばす。
 …――アタシの想いも知らないくせに…

 あなたは一体、何がしたいの?…何を、考えているの?





「知らないわけないだろう。」


 聞こえた声にハッとして、自然と俯いていた視線をグリーンに合わせる。
 グリーンは…いつも同じ顔してる表情を和らげて……微笑んでいた。


「俺はいつも、お前を見ていたからな。」

 だからお前の感情に気が付かないわけがない、だろう? ブルー。


 そう、平然と言ってのけたヤツに目を見開く。
 しばらくして漸く、その言葉に含まれた意味を汲み取れて、数分前に体験したまた体験しているんだと顔に血が集まってくる感覚から解った。

 ――コイツッ…知ってて今まで…ッ!?

 思考が現状に追いついたところで一言。


「っアタシの涙を返せーッ!!」


 今までさんっざん悩んだ苦労は何だったのよ!?
 全部無駄じゃない!
 思わず、クククと喉で笑っているグリーンに逆ギレしたくなったのは道理でしょ。


「くくっ…まぁ、俺を堕とせるよう、精々頑張れよ?」

「…当たり前よ!」


 笑っていられるのも今のうちなんだからね、グリーン。
 今、ここで宣戦布告してあげるんだから。


「絶対振り向かせてみせる!」





 ――アタシには幼なじみがいる。

 頭脳明晰で武道有段者、肩書きだけでもそれなりの評価を得るのに、極めつけは冷静沈着な性格といかにも女の子にモテそうな整った容姿。

 ――文武両道・容姿端麗・そしてクールなアイツ――



 アタシの、好きな人。





絶対振り向かせてみせる!



___________
お題第二段!
はい、相変わらずグダグダでs(ry
やっぱりブルー姐さんにはがんがんアタックしてもらいたいですね^^

ちなみに関係ないですが、もう一人いる副会長はレッドさん。(体育委員長兼任でバスケ部部長
グリブル関係無いネタ設定ですみません;;



[2008.12/04]
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