ながなが生地

□導きの声
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拓也・輝二・輝一の三人は、今日休む洞窟から少し離れた場所で薪を拾っていた。

しかし、拓也は先程からしきりに辺りをキョロキョロと見回していた。

まるで何かを探しているかのように…


輝二と輝一はお互いに顔を見合わせてから拓也の傍へと近寄る。


「拓也、何かあったのか?お前 絶対におかしいぞ」

「…そんなにオレ、おかしいのか?」

「うん、何だかいつもと違うんだ。それは俺でも分かるよ」


仲間になって間もない輝一から見ても、今の拓也の様子は挙動不審だった。

グッと手を握り、拓也は俯く。

しばらくの沈黙の後、意を決したかのように顔を上げ二人を見据える。

だが真っ直ぐ見つめあって話すのはやはり気恥ずかしいのか、少し視線を逸らしポツリと話し始めた。


「……声が、するんだ……」

「「声?」」


流石は双子。みごとにハモリましたね。

とまぁ、それはさておき、


「それは誰の声なんだ?」

「わからねえ… でも、ハッキリ聞こえるんだ…助けを求める声が、オレを呼ぶ声が……」


輝二の問いに拓也は首を横に振り、不安げな表情を見せた。

それはいつもの拓也らしからぬ弱気なふうに感じられた。

しかし、急に拓也はハッとしてまた辺りをキョロキョロと見渡し始める。


「誰!?誰なんだ?!何でオレを呼ぶんだよ!!?」

「どうした!拓也!!」

「声がする……何でオレなんだ!!」


両手で頭を抑えながら問いかけるように狂い叫ぶ拓也。

輝二は拓也の肩を揺すり、しっかりしろ!と落ち着かせようとしている。

そんな中、輝一は極力冷静に辺りをグルリと見てみるが、怪しいものと思われるような姿は無かった。

そしてふと、思った事をポツリと一人呟く。


「俺達には何も聞こえない…。その声は拓也にしか聞こえないのか?」

「拓也!!」

「え…?」


一瞬、だった。


大丈夫だろうと思い輝一が二人から少し視線を外していた時、輝二が拓也の名を叫んだ。

何事だろうと振り返るとそこで目に入ったのは、

輝二と拓也と光を放つ扉。


何が起こっているのか、輝一には解らなかった。




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