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□‡静かな時間
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ティエリアはもともと必要のあること以外あまり人とは話さない。
「……」
「……」
ここは地球のカフェ。
憩いの場でありそれなりに風景がいいところだ。
都会にも関わらず密封とも言える程この店には音がない。
ジャズ系な曲がかかるようなアンティークな店であるのに流すスピーカーすらなくこの店に音楽が流れることなどないだろう。
店にはチラホラ客がいるが会話も少なくやはり静かだった。
それでもやはり場には空気があるもので。
「……」
「……」
シーンと静かな空間にするのは食器が奏でる音だけ。
この場だけはなぜか回りとは空気が違い何かぴりぴりとしていた。
よく喋る人にはこの空気は堪えられないかも知れない。
だからと言って睨み合っているわけじゃなくただ普通に珈琲を飲んでいるだけだ。
「…ティエリア」
「……なんだ」
「今日は砂糖は?」
「気分じゃない」
「そう」
他人ならなんて居心地の悪い空間だろうか。
お互い目も合わせずただ窓越しの風景を見たり雑誌を読んだりするだけなんてどこででも出来る。
「これからどうしようか」
「……」
「ティエリア…?」
「ん…どうでもいい」
「帰らないの」
帰ってもただなにもなく過ごすだけだ。
目を閉じたら浮かぶのは殺戮だけ。
少しばかりの休みでも考えることは変わらない。
それならどこでもいい。
ただ静かに過ごせればいい。
「もう一杯飲んでから帰る」
「ここの珈琲が気に入ったの?じゃあまた来ようか」
「…ああ」
別に珈琲が気に入ったわけではなかったのだけれど、この店に連れて来たアレルヤがあまりにも嬉しそうに微笑むから小さいながらも返事を返す。
地球が嫌いなティエリアが穏やかな気持ちでいられるのは静かで、アレルヤがいるからであることは本人さえも気がつかないことだった。