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□‡その感情の名は、
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「…なにより…亮の声を遮ったのが気に入らない…」


そこか。なによりそこなのか。
大事なティータイムが汚されたとかんなじゃねぇんだ。そんなこと言ったら俺は引くけど。


「別にいいだろ?ここはみんなのファミレスだし…」

「……あんな人間を造るくらいなら…どうしてカミサマは『彼女』をここに置いてはくれないんだろう…」

「……」


視線をこちらに戻し再びティーカップを口に運び今度は紅茶を飲み干す。
ソーサの上にカップを置くとカチャリと音がして、また薫は外を見つめた。
俺はかける言葉が見つからずに飲み干されたティーカップの中のうっすら残された水溜まりを見ているしかなかった。

だってこんな思いをさせているのは俺だ。
その俺が「元気出せよ」とか、軽率なこと言えるわけがない。
エンデュランスから彼女を奪ったのは俺で
エンデュランスを必要としたのも俺。
身勝手過ぎる。
AIDAもなにも知らない人間が聞いたらきっと俺が悪いと言うに違いない。

AIDA…彼女を消してしまって、せめてもの罪滅ぼしに替わりになれたらなんて思ったけどエンデュランスの中で大きかった『彼女』の存在の替わりにはなれないのだと今実感した。

俺のことを好きなんて言ってそれでも『彼女』を思うお前は俺を替わりにしようと、心を紛らわせるための存在にしようとしてるのかも知れない。
けど俺はそれでも構わない。
一番を奪われることの辛さは知ってるから。
俺は新しい一番を手に入れることができたけど…薫がこれから『彼女』に替わる一番を見つけれないなら俺はなんでもいい。
替わりでも支えでも。


「…そうだ…亮…ここの料金はボクが払うから…好きなもの頼んでいいからね…」

「な、やだよ。お前働かず親の金で生活してんだろ?自分のは自分で払うから、余計な気まわすな」

「でも…ボクが亮にしてあげることは少ないから…」

「……」

「ボクがここに呼び出してそれからここに来るまでのお金も亮持ちだし…呼び出したのになにもしないなんてダメ…」


全然ダメじゃない。
黙って俺のこと頼って、使うだけ使ってやりたいようにすればいいんだ。
いらなくなれば捨てればいい。
とか言えばよかったのに。
本当は多分罪滅ぼしとかじゃなくてどっかで好きって気持ちがあったから。


「……薫は…今彼女が戻ってくるとしたら、俺と彼女、どっちを求めるんだろうな」
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