テニス・レポート 番外

□妹と友達
1ページ/1ページ

勢いよくラケットを振るうと小気味いい音を立ててボールがコートへと打ち込まれた。
彼女の実力から言うと、それは偶々だろうがラインぎりぎりのかなり際どいところに鋭いボールが落ちた。
まさか彼女がそんな球を打つとは思っていなかったのだろう。
神尾も伊武もふいをつかれたような顔をしてそのボールを見送った。

最近妹の杏が楽しそうにしていた。
学校で良いことがあったのか、と聞くと違うという。
それどころかお兄ちゃんには関係ないの一言でバッサリ切り捨てられた。
余程がっかりしたように見えたのだろうか。
その後すぐに慌てた様子で杏は話してくれた。
いきつけのストリートテニス場で最近女の子と仲良くなったのだと。
なんでも最近引っ越してきたばかりで、どこの学校に通ってるのかは知れないけれど不動峰でないことは確かだからすごく残念だと話していた。

「テニスは今まであまりやったことないみたいで、言い方は悪いけどすごく下手なの。でもテニスやるのが心底楽しいんだなぁってその子を見ると伝わってきてね、初心を思い出すというか、私も頑張ろうって思えるの」

少し恥ずかしそうに言う杏を見て、その人に興味も持ったのは自然だろう。
兄として、妹の交友関係に口を出すことはしないが気にはなる。
そして、杏からその話を聞いて数日後、ひょんなことから俺たちはその杏の新しい友達と会うことになる。
初めて会った印象は、落ち着いた子だった。
杏より一つ上で、俺と同い年だと聞いたが、活発な杏とは一見正反対そうに見えた。
しかし共にダブルスを組むと、結構大胆な性格をしているのだなと思った。
意外と攻撃的なプレイスタイルで、技術は拙いものの熱意は伝わってくる。
何よりも試合を楽しんでいるのが伝わってきて、杏の言っていることが少し、分かった気がした。
帰りにうちで夕食を食べて帰ってが、礼儀正しい子だった。
杏に良い友達が出来たな、と言うと杏は嬉しそうに、満足そうに「でしょう」と笑った。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ